失敗はリベンジのエネルギーを蓄積するプロセス
【徳重】日本人でやる気のある人たちが僕の講演を聞きに来てくれるのですが、一歩踏み込めないでいるんですよ。その理由を聞いていると、「失敗したらどうするんですか」と言ってくる。そういう人って経歴がきれいなんですよ。一回も失敗したことがないから失敗が怖いんですね。僕はそういう人たちに必ず言います。「失敗はリベンジのエネルギーを蓄積するプロセスだと考えろ」とね。何か新しいことを突破するときには、ものすごいエネルギーがいるんです。
僕が大学生だった頃に、起業に興味があって起業する人物について研究をしていたんです。あの当時の起業家って、貧乏か学歴がないか女の子にモテないとか、なんかこう3点セットみたいなものを兼ね揃えていたんです。その悔しさにものすごいエネルギーが溜まってるんです。
普通にきれいに生きてきた人ってエネルギーが足りてない。失敗するということが格好悪すぎるので、一生懸命考えて失敗してしまうことを受け入れられない。そこで発想の転換をして、失敗こそエネルギーが溜まるプロセスだと思えば、すごく前向きにもなる。
【窪田】まさにその通りですよね。純粋に失敗することなく一生を生きていくなんて、現実社会では確率論的にあり得ないわけですよ。
失敗の経験を積む必要性はどことなく生物学的にも共通している気がします。死なない程度に傷つくというのは、免疫をつけるという意味で生物学上でも非常に重要ですから。それをビジネスでも体験できれば、より大きな事業やリスクを伴う大きな挑戦に挑めるようになる。なおかつ、致命傷を負わずに前に進んでいけるようになる。だから、「あ、これは今、自分の体を鍛えているんだな」と、失敗をポジティブに捉える。究極は生き残りさえすればいいんですから。
順調に行く人はまずいない。成功の過去には大きな挫折という傷を負ってる。
【徳重】僕自身の体験でもそうですけど、人間はどんなに苦しい日々が続いても、時間が経つとまた歩きはじめることができる生き物なんですよ。僕の人生の中で体がバラバラになるくらい一番格好悪かった経験というのは、会社をやめてMBA留学するために渡米した時のことです。自分の人生をイチから立て直すために、周囲の猛烈な反対を押し切って住友海上をやめ、啖呵を切ってシリコンバレーに渡ったにも関わらず、バークレーもスタンフォードも落ちたんですよ。
別に受験に落ちただけなら大した話ではないのですが、一大決心したことがうまくいかなかったものですから身も心もズタズタになりましたね。失敗に打ちのめされた僕のキーワードは「絶対にリベンジしてやる」でした。シリコンバレーに行くんだ、残るんだ、というのが僕のリベンジでした。それは絶対でした。
格好悪い大失敗がないと、そこまでの執念って育たないんですよね。そう考えれば、挑戦してうまくいけばもちろんいいわけですが、駄目だったとしても、次に突破するためのエネルギーとか執念を蓄積するプロセスであると受け止めればいい話なんです。若いうちに思い切ったことをして失敗を経験すればするほどいい。失敗が怖くなくなるから。
【窪田】そういう第2の挫折というか、苦汁を嘗めてそこから這い上がってきたという経験は強いですよね。人間、いきなり最初から大きな失敗に遭遇するとそこで潰れたりしますけど、ギリギリ克服できるぐらいの強烈な挫折とか、それくらいのストレスを感じながらも乗り越えた経験を持っていると、次、より大きな大波が来ても乗り越えられるという強さが身につくんですよね。
失敗っていうと、マイナスのイメージがある言葉に捉えられますけど、失敗がなければその先に成功はないですから。次へのステップになる失敗は、必要な失敗なわけです。価値ある失敗であることを社会が許容すれば、失敗を恐れない気骨ある人が増えてくる。徳重さんのお話を聞いているとそれを強く思います。