「意志の力は鍛錬で強くすることができる」
ところで、インターネットは、瞬間の誘惑を、次から次へと繰り出してくれる道具である。だから、夢を育むよりも、夢を抱くことを忘れさせる役割をすることが多い。
スタンフォード大学の心理学者、ケリー・マグゴニガル『スタンフォードの自分を変える教室』(大和書房)によれば、人間の意志の力(Willpower)には3つの側面がある。1つ目は自分の目標に沿うことを実行しようとする意志(I will、「やるぞ」)、2つ目は、それ以外のもの(誘惑や快楽など)を切り捨てる能力(I won't、「しないぞ」)である。3つ目は、自分が何をしたいかの目標をはっきさせる力(I want、「こういう人間になりたい」という夢)である。
「しないぞ」は、やらなくてはいけないことをやらないのではなく、やりたいことをやることを妨げるものをやらない力である。そのためには、自分のゴール(夢、I wantの対象)をはっきり認識しておかないといけない。将来の目標や希望がないと、あるいは常に思い出していないと、どうしても瞬間の誘惑(快楽)に流されてしまう。やはり、「明日できることは今日するな」ではなく、「今日できることを明日に延ばすな」である。
マクゴニガル先生の教えは、「意志の力は、筋肉と同じように、ふだんの鍛錬で強くすることができる」ということだった。
ここでは、その意志の力を衰えさせがちなインターネットのマイナス面についてふれておこう。たとえばゲームに没頭すると、現実世界を忘れてしまいがちである。ゲーム中毒者たちはもっぱらゲーム(サイバー空間)の中で生活しており、ときどき現実世界に「ログイン」する。