学生対象のセミナーを行う傍ら、All Aboutなどで就活関連の記事も執筆している就活コンサルタントの小寺良二氏からは、さらに厳しい話も飛び出した。

「『門前払い』というと聞こえが悪いですが、日本の50%以上の企業が『ターゲット大学』を決めているといわれています。企業によっては説明会の段階でふるい分けているところもある。さらに、GMARCHや関関同立などの上位私立校の学生でも、安心はできません。これらの大学の学力に対する企業の信頼感に陰りが出ているのです。というのも、少子化の時代にあって、すでに大学は学生の取り合いの状況になっている。ネームバリューのある上位私立校ですら、指定校推薦やAO入試の枠が年々増えています。そこで最近は面接のとき学生に一般入学か推薦入学かを問う人事部も多い。当然、評価が高いのは一般入学の学生です」

上位私立校でもこの厳しさ。就活にあえぐ学生が多いのも納得である。

こうなってしまうと、上位20校以外の学生は門前払いになってしまうようにも聞こえる。しかし、小寺氏はそこまで状況を悲観していない。

「偏差値上位校に有利な状況ではありますが、企業もすべてを学力だけで判断するわけではありません。逆に偏差値上位校に内定者が偏ってしまうことを懸念している企業も多いのです。下位校の学生にもチャンスはありますし、面接が最大関門である状況は今後も変わりません」

“大学名”、SPIに加えて、採用市場に新たな指標が持ち込まれようとしている。それは“学業成績”だ。

「これまで大学の成績が就活で重視されなかったのは、大学によっても、教授によっても成績の付け方の基準がバラバラだったから。この成績もGPAという成績の平均値で統合されつつあります。また、DSSというNPO法人を立ち上げ、成績の比較を容易にできるような制度も徐々に整い始めている。GPAについて言えば、欧米ではすでに科目にコードが振られており、コードを見れば『100番台は基礎』『300番台は専門的な応用』など、科目の分野や難易度がおおよそわかるようになっています。これだと、“簡単な基礎科目で成績を稼ぐ”ことも難しくなってくる。日本でも今後制度が整えば、大学の成績にもごまかしが利かなくなる。これから先、希望の企業に入社するためには、真面目に勉強をすることも必要条件という時代になるでしょう」(森氏)

これによって、“有名大学に入ったら就活までは楽ができる”という神話も完全に過去のものになると森氏はみている。