まず、12年までの対象項目について見てみよう。通勤のための費用にしても、技術習得のための研修費用にしても、もともと会社から支給されていることが多いものばかり。現実の世界では、初めから特定支出の対象にはなりにくかったのだ。それだからなのだろう、少し古いデータであるが、08年に特定支出控除を利用した人は、たったの6人しかいなかった。
では、13年に新たに認められたものについてはどうか。図書・衣服費と交際費については年間最高で65万円までしか認められていないことに注意を要する。場合によっては特定支出控除額を下回ってしまう。それに、ほかのすべての項目についても共通しているのだが、書店や飲食店の領収書を添付して確定申告すればOKというわけではない。「職務に必要だった」との会社の証明書の添付が求められるのだ。
一方、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費用なども新たに対象となり、これについては資格取得を目指す人にとって使い勝手があるように思える。法科大学院にしても、専門学校にしても、年間の授業料だけで、先の給与所得控除額の半分というボーダーラインを越える可能性が高いからである。
ただし、そこでのネックも会社の証明書が必要なこと。お伺いをたてたものの、「資格の勉強のためにサボっている」とみなされたら“藪蛇”であろう。事前に「なぜ必要なのか」の理論武装をしておくことが大切だ。
それにリストラが常態化しつつあるいま、会社にも社員の資格取得に対して度量のあるところを見せてほしいものだ。そうすれば、特定支出控除の活用とともに社員のモチベーションもアップが期待できるからだ。