あるとき、小笹会長たちが仕事に入った現場で、ひとりだけ桁外れに仕事が速いトビの親方がいることに、小笹会長は気づいた。
なぜ、あの親方だけ、あんなに速いのか。じっと観察していたら、これまで見たことがないような足場の外し方をしている。
外壁を塗装するための足場は、ふたりがかりで分解するものだ。ふたりで端と端をもって、足場の板を降ろしてから、補強の鉄パイプを外す。
ところが、その親方は、先に補強の鉄パイプを外すことで、ぐらぐらになった足場の振動を利用して、ひとりで板を降ろしていたのだ。
これに気づいたとき、小笹会長はまさに目からウロコが落ちる思いがしたそうだ。そんなやり方をしているトビ職人を見たのは、はじめてだったからだ。自分たちでも、さっそくそのやり方を取り入れることにした。
小笹会長が現場で仕事をしている間、そのようなやり方で足場を解体する職人に出会ったのは、後にも先にもこのときだけだった。
しかも、小笹会長だけが、そのトビの親方のやり方を盗んだのだ。
もしかしたら、トビの親方のやり方に気づいたのも、小笹会長だけかもしれない。気が利かない職人であれば、「あの業者だけ速いな」で終わってしまうだろう。
一流に学び、一流のワザを盗むことができるか。
何より、その前に一流の存在に気づく目配りがあるか。まずは、その目配りができるかどうかに、とてつもない報酬への第一歩がある。
【年収1億を生む黄金則】まずは、一流の存在に気づくための目配りをする。
(※『プロフェッショナル ミリオネア』(プレジデント社刊)第2章「学ぶ、人にあげてもらう」より)