最悪の場合、日本語も英語もデキソコナイの子に

バイリンガルの親が幼児英語教育を焦らない理由
【2】日本語も英語もダブルリミテッドになってしまうから

子どもに日本語と英語というふたつの言語をバランスよく習得させるためには、教える側にも技術や根気が求められる。どの言語でも、意思の疎通ができるだけの言語ネットワークを形成するためには、それなりの時間が必要だ。周囲と同じ発達スピードで2つの言語を習得させようとすれば、単純に考えて2倍の労力が必要になる。

その重みを深く考えず、バランスを誤った過度な外国語教育を受けさせることは、子どもにとって大きなストレスになる。最悪なケースでは、どちらの言語の発達も一定レベル以下の言語力しかない“ダブルリミテッド”の状態になってしまうのだ。

バイリンガルの親たちは、わが子がダブルリミテッドにならないように非常に気を遣っている。幼少期からの英語教育を行う場合にも「英語教育は年齢に合ったものであるべきなので、幼少期は英語の音に慣れさせることにとどめている」(児童英語教師)「英語のインプットが一方的でなく、アウトプットにつながるように、レベルや方法を工夫している」(英語教師)など、子供にストレスを与えない方法を熟慮している。

言語は子どものアイデンティティの形成に深く関わっている。ひとつの言語を他者と同じように話すことは、その社会とつながりを感じるための重要な要素だ。だからまずはひとつの言語を習得しアイデンティティを確立して欲しいと考える親が多いのだ。

「本人がやる気になれば英語は習得できる」

バイリンガルの親が幼児英語教育を焦らない理由
【3】やる気になればできるはずだから

「英語は難しくない」とは、英語を習得した人がよく言うことだ。確かに英語は数ある言語のなかで、比較的構造が単純だといわれる。だからこそ共通言語として、世界中で最も多くの人が使っている現状がある。ゆえに完璧なネイティブレベルの英語にこだわらなければ、必要を感じてから学べば十分英語を身につけられると、日英バイリンガルの人々は考えている。

もうひとつは子どものモチベーションの問題がある。外国に在住するなど、否応なしに英語を学ぶ環境は別として、第2言語の習得のためには本人のやる気が欠かせない。筆者の周囲でも「音感をつけるなどの基礎的な素地は作っても、本格的な英語教育は本人がやる気になってからでよい」(児童英語教師) 、「本人がやりたいと思ったら、やれる環境を作っておくに留める」(別の児童英語教師)など、本人の意思を尊重する意見が複数見られた。