今年4月に開催される「大阪・関西万博」。その英国政府代表を務めるキャロリン・デービッドソンさんは、同じく外交官の夫、トマス・カーターさんと交替で大使を務める「ジョブシェア大使」という働き方を始めた先駆者だ。どのような働き方で、どのようなメリットがあるのか、国際教育評論家の村田学さんが取材した――。(前編/全2回)
あ
撮影=プレジデントオンライン編集部
キャロリン・デービッドソンさん
キャロリン・デービッドソンさん
「大阪・関西万博」英国代表、前在大阪英国総領事。イギリス北部のマンチェスター出身。外国語を学ぶことが好きで大学ではドイツ語とフランス語を学ぶ。学生時代の留学経験から外交官の仕事に興味を持ち、外務省に入省。2003年から2015年まで、夫のトマス・カーターさんとジョブシェアで公使や大使の仕事を務め、世界初の「ジョブシェア大使」として知られる。日本語も堪能。

「キャリア」と「育児」の両立を模索

――デービッドソンさんは、世界で初めてご夫婦で「大使」の仕事をシェアされたそうですね。どのような経緯で始めたのかを教えてください。

私たち夫婦は駐ドイツ英国大使館で働いていた時に出会い、結婚しました。長男が生まれた時に私が育児休暇を取ったのですが、その間に夫は駐タイ英国大使館に異動となり、私と息子たちも一緒にタイで生活しました。

夫の任期がもうすぐ終わるという2002年、次のポストをどうするか二人で話し合いました。私はそろそろ仕事に戻りたいと思ったのですが、子どもは当時、4歳と3歳。もし二人ともフルタイムで仕事をしたとすると、幼い子どもたちに大きな負担がかかります。

一方、夫は働いている間、子どもたちにあまり関わることができないことを変えたいと考えていました。フルタイムとなると、9時から5時まで働くだけでは済みません。長時間働かなければならない日もあって、あまり息子たちと関わることができません。そして働いていないほうは、長すぎるくらいの時間を息子たちと一緒に過ごすわけです。

そこで、夫から出たアイデアがジョブシェア(※)でした。

仕事を半分ずつ分け合えば、両方が息子たちの面倒を見ることができますし、キャリアを続けることもできます。私ももちろん賛成でした。

※ ジョブシェアはフルタイムで働く人が通常、一人で担うポストを複数の人数で担うこと。ワークシェアリングは雇用を維持、または創出するために、労働時間の短縮を行うもの。

――夫婦で大使の職をジョブシェアするという案は、ご本人たちから外務省に持ちかけたわけですか?

はい、私たちから外務省に提案しました。

イギリス外務省のポストは公募制で決まり、「○○という点で私はこの仕事に誰よりも向いています」とアピールしなければなりません。私たちは大使のポストにそれぞれが応募をし、面接も別々に受けました。そして自己アピールとともに、どのようにジョブシェアをするのかについて話しました。

夫と私で4カ月ごとに「大使」の仕事と「家事・育児」を交代します。4カ月としたのは、ある程度、まとまった期間であるためプロジェクトにしっかり関われるためです。これが半年だといつも同じ季節に仕事を担当することになるので、4カ月としました。