エネルギーを地産地消するように、都市ガスから自宅で電気をつくる。それが家庭用燃料電池「エネファーム」だ。この自宅で発電する先進のシステムによって、住宅でのエネルギーとの付き合い方や私たちの暮らしはどう変わるのか──。東京ガス燃料電池事業推進部長・穴水孝氏と、フリーキャスターの高樹千佳子さんが語り合った。

スタンダードとなった
「エネファーム」

住宅での家庭用燃料電池「エネファーム」への支持が着実に広がっています

穴水 孝●あなみず・たかし
東京ガス株式会社
燃料電池事業推進部長

1985年の入社時より技術開発部門でガス設備等の商品開発に従事。2005年以降、営業部門で家庭用分野の技術統括などを経て、2012年より現職。

高樹千佳子(以下、高樹) 今日、東京ガスの新宿ショールームで、「エネファーム」の構成ユニットやリモコンの実物を初めて拝見しました。でも「エネファーム」のことは以前から知っていましたよ。もう社会に浸透していますね。

東京ガス穴水孝(以下、穴水) おかげさまで、私どもの調査でも認知度は80%を超えています。

高樹 やっぱり高いですね。実際には、いま設置しているご家庭は、どのくらいあるのでしょうか。

穴水 東京ガスでは2009年に一般販売を始め、初年度は約1,500台、10年度には約2,400台、11年度には約5,700台を販売しました。本年度は8,000台に迫り、累計は本年度末で1万7,000台を超える見通しです。他社さんを合わせた全国レベルの普及台数は、本年度末で4万台を超える勢いです。

高樹 年々、普及のピッチが上がっていますね。背景には、東日本大震災もあるように思います。震災を境に、従来の環境保全だけでなく、住宅でのエネルギーを考えることがごく身近になりました。

穴水 そのとおりですね。「エネファーム」発売当初は、やはり環境への思いが強いお客様による購入がほとんどでした。しかし震災以降は、エネルギーを根本から見つめ直して、省エネ・節電を考えるという意識の変化が広がっています。また「エネファーム」の改良やコストダウンも継続的に進めており、国の補助金もあるので、導入していただきやすくなりました。

高樹 希望小売価格は、いよいよ200万円を切るとお聞きしています。

穴水 はい。4月に新発売となる3代目の「エネファーム」で実現します。ユニットのスリム化も一段と進みました。

発電時の「熱」を無駄にせず
エネルギーの高効率を実現する

いま、住宅でのエネルギーについて誰もがごく身近な問題として考えるようになりました

高樹千佳子●たかぎ・ちかこ
フリーキャスター

横浜国立大学工学部建設学科卒業。2002年より3年間、フジテレビ系『めざましテレビ』でお天気担当。現在BS JAPAN『NIKKEI × BS LIVE 7PM』などで活躍中。

高樹 「エネファーム」は「家庭用燃料電池コージェネレーションシステム」ということですが、この機会に発電の仕組みなども教えてくださいますか。

穴水 分かりました。水を電気分解すると、水素と酸素に分かれますが、燃料電池の仕組みは、電気分解の逆。水素と酸素を反応させて発電するんです。

高樹 私、学生時代は理系だったんです。確か中学生のころ、電気分解の実験をしたのも覚えています。

穴水 この原理による発電は、1839年に英国のウィリアム・グローブが初めて成功させました。

高樹 えっ!? 19世紀の研究だったんですか。でも発電に必要なのは水素と酸素。都市ガスとはどういう関係が?

穴水 実は都市ガスの主成分であるメタン(CH4)は、炭素原子(C)1個につき水素原子(H)が4個。他の燃料より効率よく水素を取り出せるんです。それを空気中の酸素と化学反応させて発電し、そのとき発生する熱でお湯も一緒につくるのが、「エネファーム」なんです。

高樹 つまり、発電する際の熱も捨てず無駄なく使える仕組みになっていると。