インプット"オタク"の学生に望むこと

「コスト削減」は何十年も前から叫ばれ続けているテーマです。まして日本企業は、プラザ合意後の急激な円高の際、あるいはバブル崩壊後の失われた10年の際、血のにじむようなコスト削減を実行してきました。にもかかわらず、なぜ再び「コスト削減」が経営課題としてクローズアップされるのだろうか? 「過去のコスト削減」は結局のところ、効果が小さかったということなのだろうか? 仮にそうだとして、それは一体なぜなのだろうか? 今回はその落とし穴をどうやって克服する(できる)のだろうか? いや、必ずしも「過去のコスト削減」の効果が小さかったわけではないとして、「過去のコスト削減」と「今回のコスト削減」は本質的に何が違うのだろうか? もっともっと掘り下げて議論しなければ価値がない、というわけです。

そして、こういった「根っこ」の部分を議論することなしに、費目別のコスト削減事例の紹介に終始しては、戦略コンサルタント失格です。戦略コンサルティングは、断じて知識の切り売り商売ではありません。

情報の取得容易性が急激に高まり、情報格差が「カネ」を生み出す可能性は限りなくゼロに近づきつつあります。情報の「海」から抽出する独自の示唆こそが唯一の価値になりつつあります。「成功事例」や「勝ちパターン」は知っていて当然のことであり、勝負のポイントではありません。それらを当該業界や当該クライアント企業にとっての意味合いに変換し、過去の歴史の流れの中に位置づけ、他の経営テーマと融合させたうえで自分なりのユニークな視点で示唆を語れるか? 信頼しうる情報が限られる中で、自分なりのユニークな枠組みを持って示唆を捻り出せるか? そこが勝負のポイントなのです。

ビジネススクールの学生の多くは、著名な経営学者の著したベストプラクティス分析論文や著名な経営者の成功哲学などを見聞きすることに熱心です。しかし、決してそれらを鵜呑みにしてはなりません。多くの場合、一服の清涼剤に成りこそすれ、毒にも薬にもならない曖昧模糊とした最大公約数的示唆か、脚色された自伝的美談に過ぎないことが殆どなのです。そこで「真に大切なこと」は決して語られません。だからこそ、インプット“オタク”の学生たちには時として怖さすら感じます。「本質を掘り下げていく苦しさ」を楽しみ、「失敗事例」から多くを学び、避けるべき「負けパターン」を抽出できる人間になって欲しいものです。

※すべてメルマガ配信当時