現代アートの世界で、宮島達男は有名なアーティストなのですが、テレビ朝日の前にある作品が誰の作品なのかは、あまり知られていません。本当ならば、誰でもが知っていて当たり前だし、そういう時代にならないとマズイ。テレビなどで海外の大規模な現代アートプロジェクトがニュースとして取り上げられることがありますが、その時に、面白アート、ちょっとかわった作品としてだけ報道され、作者の名前が出されることはほとんどありません。これは実に勿体ない。昨年、ニューヨークで突如、出現した大きな滝の作品は、オラファー・エリアソンの作品だったのですが、日本のお昼のニュースで、作者である彼の名前は報道されませんでした。

Mega Death(1999) Photo by Norihiro Ueno Courtesy of the Japan Foundation, SCAI THE BATHHOUSE
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Mega Death(1999) Photo by Norihiro Ueno Courtesy of the Japan Foundation, SCAI THE BATHHOUSE

同様に、1999年、イタリアのヴェネチアで発表された宮島達男の素晴らしい作品も、多くの人が知るまでには、これから数十年かかるのかもしれません。外国のキュレーターが評価し、外国の美術館がコレクションするのかもしれません。このままでは、そうなるしかない、のです。しかし、今、日本人の現代アーティスト達は、本当に素晴らしいクオリティーと世界に通じる力強いコンセプトで、力作を送り出しています。おそらく研究者がノーベル賞を受賞し科学や化学に貢献するのと同じくらいのレベルで、貢献しています。

さらに宮島達男はヴェネチアビエンナーレの日本館の展示で、もう1つの作品を発表していました。それは長崎で被爆し、奇跡的に生き延びた柿の木の孫苗をヴェネチアで再生させたものです。これは現在も続いている「柿の木プロジェクト」というもので、宮島達男が中心となり、たくさんのボランティアスタッフとともに、植樹しているアートプロジェクトです。

ただ、このプロジェクトそのものは、アート作品といえるかどうか、が論議を呼びました。私は、1999年当時には早すぎたのだ、と思っています。というのは、植物である柿の木の苗は、アート作品とはいえず、宮島達男がやることについては、疑問を持つ人が多かったからです。しかし、アーティストがただ単にパブリックアート作品を展示するだけではなく、広く世の中にメッセージを発信したり、作品によってコンセプトを問うという行為は、大事なアートの役割です。柿の木の苗は、日本館での展示終了後、ヴェネチア近郊の小学校の校庭に植樹され、今も元気に育っています。おそらく、柿の木の存在は、日本での原爆の話とともに、語り継がれることでしょう。

宮島達男は、日本人しか出来ない展示をあざやかに行いました。だからこそ「世界の宮島」と呼ばれているのです。彼の作品は、本当の意味で、発信するアートだったし、アートにおけるオリジナルな表現とは何かということに一石を投じることになった作品でした。

日本が世界に誇れるものはたくさんありますが、それらを作品の中に取り入れ、それを示唆する美しい作品として世界へ発信できるのが現代アートなのです。そうした作品やアーティストのことを、一人でも多くの皆さんに知っていただくこと、その役割が私の天職と思い、頑張っていきたいと思っています。