なぜ、日本の学校では整列する際、背の順に並ぶのか。現役小学校教員の松尾英明さんは「背丈という本人にはどうしようもない身体的特徴を並べて比較し、小さい方から大きい方へと序列をつけて並べる。これは差別であり、いじめの類でもある」という――。

※本稿は、松尾英明『不親切教師のススメ』(さくら社)の一部を再編集したものです。

秋晴れの富士山のふもとで運動会
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「背の順」は身体的特徴による差別の誇示

学校では、何かにつけて「背の順」で並ぶ。このことに対し、違和感をもつ日本人は少ないのではないか。小学校入学時どころか、幼稚園・保育園児の頃からあまりにも当たり前にやらされることなので、自然にそういうものだと思わされる慣習の一つである。

冷静に考えて、背の順に並ばせるのは、身体的特徴による差別の誇示である。背丈という本人にはどうしようもない身体的特徴を並べて比較し、小さい方から大きい方へと序列をつけて並べる。一番小さい人と一番大きい人を確定して、誰の目にも明らかなように序列を公表する。

これが身体的特徴による差別であることは、大人が会社等でこれを強制されないというのを考えればわかる(体重順に並ばせるのも全く同じことである)。明確な差別であり、いじめの類の行為である。

しかし、慣習というものは、多くの場合それがもつ問題点に全く気付けない。

それでも「背の順」に納得のいく明確な理由があればいいが、大抵は論理の通らないこじつけにすぎない。実際は、単に慣例として行っていることがほとんどだからである。

こじつけの一つとして「背の順だと前がよく見える」という俗説が学校ではまかり通っているが、全く出鱈目なウソである。やればわかるが、自分と近い背丈の者が前方にいる時には、目の前の人の頭部しか見えない。眼球は頭部の頭頂部ではなく顔面中央付近に付いているのだから、当然である。

しかしながら、このようなことは過去何十年にもわたり、問題にすらなっていなかったのである。