遷都に伴う公共工事はその国の経済を活性化させる

遷都は、それ自体が巨大な公共工事であり、経済を活性化させる。最も大きいのは首都移転に伴う経済波及効果だ。仮に56万人の都市形成を実現させたとすると、直接の経済効果だけに限定して試算しても、民間と公的部門の合計で約32兆円。今後のITやAI(人工知能)の波及効果も含めて考えると、全体では200兆円から300兆円にも達するという。

この三菱総研の試算は、首都機能分散を進めたマレーシアの事例を参考に算出しているものだ。1991年、当時のマハティール首相は情報化構想「マルチメディア・スーパー・コリドー(MSC)」実現のために首都クアラルンプールが持つ情報通信機能を引き継ぎ、さらに発展させた電脳都市「サイバージャヤ」と首相の執務室を置く新行政都市「プトラジャヤ」を建設する方針を打ち出した。

新首都の建設は2010年代から始まり、現在も続いているが、この首都機能分散がコロナ前のマレーシアの経済発展を下支えしたひとつの要因であることは間違いない。

新しい首都への投資効率は東京の10倍以上

首都移転の効用で最も大きいのは、投資効率の高さだ。同じ資金を投じるにしても、地価が高騰した成熟化した都市と、未開発の原野とでは、同じお金でできる仕事の量がまったく違う。新首都の建設に振り向けたほうが、投資資金は圧倒的に効率的に動く。

たとえば、日本でも、AIや6G(第6世代移動通信システム)など最先端を駆使した「スーパーシティ」構想が掲げられているが、「東京を最新鋭都市に造り替える」という発想は捨てたほうがいい。新しい街づくりは新しい場所で進めるべきだ。

仮に同じ資金を地方に投入すれば、東京の10倍以上の費用対効果を生む。建設スピードも速い。とりわけアフター・コロナの「ニューノーマル(新常態)」がリモートワーク、在宅勤務、ダブル・トリプルワークなどこれまでになかった形になるのであれば、従来型の発想では駄目だ。まったくの白地から新しい首都を建設したほうがいい。

首都移転により東京の負担が軽減されることも大きい。なぜならその分、東京の成長率が高まるからだ。たとえば、国土交通省によると、東京の首都機能が移転すると霞が関・永田町付近のピーク時における地下鉄の混雑率は10%程度緩和される見通しだ。首都高速道路の都心環状線を利用する車の交通量も3%程度減少する。

首都が移転することで生まれる土地も大きい。国家公務員宿舎の跡地などは東京都区部だけでも約130ヘクタールである。これは同区で供給されるマンションの2〜3年分にあたる。庁舎跡地(東京都区部)も80ヘクタールで東京ドームの17個分だ。