悔いのない人生を送るにはどうすればいいか。筑波大学の上市秀雄准教授は「死を間近に迎える人は5つの後悔をするとされている。自分の気持ちを伝えきれなかったり、友人とのつながりを絶ったりという『行わなかった後悔』はいつまでも消えず、心身にとって重荷となる」という――。(第1回/全2回)

※本稿は、上市秀雄『後悔を活かす心理学』(中公新書)の一部を再編集したものです。

暗い部屋に座り込んでうつむく男性のシルエット
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私たちは後悔だらけの生活を続けている

私たちは、毎日のように後悔をしながら生活を続けている。買い物をする場合、どれにするか悩んだ末に買ったにもかかわらず、「やっぱり、あっちを買っておけばよかった」と後悔することがある。特に電化製品や家具などの高価で買い替える頻度の少ないものを購入した場合に、このようなことが起こりがちである。

遅刻しそうになり急いでいるとき、電車やバスなどに乗り遅れまいと走ったのに、もう少しのところでドアが閉まって発車してしまった場合、「こんなことなら一所懸命走らず、次を待てばよかった(あるいは、もっと早く家を出ていればよかった)」と後悔するかもしれない。

株式投資で、迷った末に自分が買わなかった株が、後日値上がりしたことを知ったとき、「あのとき買っておけばよかった」と後悔した経験のある人もいるだろう。

このような些細なことだけでなく、自分たちの人生に関わるような重大なことについても後悔は生じる。自分の希望する会社などに就職することができたとしても、入社前に期待していたような仕事ができなかった場合、「他のところに就職すればよかった」と思うだろう。

「自分は体が丈夫なので大丈夫だ」と思って任意加入の医療保険に入らずにいたら、ある日大病をわずらって、医療費が思いのほかかかってしまった場合、「こんなことなら保険に入っておけばよかった」と思うかもしれない。

強く記憶に残る後悔は、心も体も蝕む

他にも、「転職しておけば/しなければよかった」「もっと勉強しておけばよかった」「あのとき結婚/離婚しておけばよかった」「約束を守ればよかった」「けんかをせず仲良くしておけばよかった」「こんなことなら競技/趣味/習い事をやめずに、ずっと続けておけばよかった」「たばこをやめればよかった」「無駄遣いせずに、蓄えておけばよかった」「もっとよく考えてから○○をすればよかった」など後悔する出来事には、枚挙にいとまがない。

このように私たちは、小さな後悔から大きな後悔まで、様々な後悔を人生の中で何度も経験しながら生きている。

後悔は、いつまでも強く記憶に残ることがある。強く後悔し続けている人は、あまり後悔をしていない人に比べ、気分の落ち込み、憂鬱などの抑うつ傾向が高いなど精神的な健康状態が悪い。加えて、湿疹などの持続的な皮膚のトラブル、持続的な胃のトラブル・消化不良・下痢、慢性的便秘、慢性的睡眠障害、片頭痛、喘息・気管支炎・肺気腫、甲状腺疾患などの身体的な健康状態もよくないという傾向もある。