働く世代の便秘には、どんな原因があるのか。年間1000人以上の社員と面談をしている産業医の武神健之さんは「飲食生活、運動、心理的要素の3つが主な原因だ。だが、知識をつけることで自分なりに解決できる人も多い」という――。
お腹の不調に苦しむ男性
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通勤が怖く、業務にも集中できない

私は毎年1000件以上の産業医面談を行っていますが、約4割は体の健康についての相談です。その中でも、時に、人に相談しにくいが切実で、しかし知識をつければ自分なりに解決できる人が多いのが、便秘に関する相談です。

今回は、私が産業医面談でお伝えしている便秘の話を共有させていただきます。あなたの快適快便生活のお役に立てば光栄です。

数年前Aさんは、業務中にトイレが我慢できなくなるといい産業医面談にこられました。

数年間便秘がちで定期的に市販の下剤を飲んでいるが、だんだん下剤の効き具合が悪くなってきた。最近は、突然の下痢もあって困っているとのことでした。

よく聞いてみると、便秘が続きお腹が張るとつらいので排便のなかった日は夜に下剤を飲むようにしているが、飲んでもすぐに便意を催すわけでもなく、翌日通勤中や業務中などに我慢できなくなってしまう。なので、下剤を飲んだ翌日は、快速列車は使わずいつでも下車して駅のトイレに駆け込めるように普通列車で通勤している。会社では、ひどい時はトイレから席に戻ってもまたすぐトイレに戻ることがあり、周囲の目が気になってしまう。そうすると、もう出し切ってお腹は空っぽのはずなのにまたトイレに行きたくなる。しかし、トイレに行っても何も出ない。

このように、お腹の具合のせいで通勤時間が怖く、また、会社でも業務に集中できないでいるようでした。

「何日出なければ便秘」という明確な定義はない

そもそも、便秘とはどのような状態を言うのでしょうか。

実は、便秘には明確な定義はありません。日本内科学会では「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」と定義していますが、実際は、毎日排便がないことを便秘と訴えてくる人や、排便してもすっきりしないことを訴える人、週末に出るだけなのに困っていない人等もいます。

Aさんの場合、毎日排便がなければならないと本人が気になりはじめたことが、全ての始まりのようでした。排便がない日は毎回お腹が張ってつらいのか聞いてみると、実際につらい時があったので、今後もそうなると怖いと思うが、冷静に考えてみればつらくない時もあったとのことでした。排便は、必ずしも毎日ある必要はない。お腹が張ったりしてつらくならないのであれば、数日ごとの排便を普通として過ごしている人も多数いるとお伝えすると、Aさんは安心したようでした。