エンジニア蔑視の風潮

日本の場合、例えばトヨタは下請け企業が新技術を開発し、コストダウンなどの成果が出たら、利益はトヨタと下請け企業で分け合うことになっている。協豊会、栄豊会といった下請け企業の団体があって、共存共栄の信頼関係が築かれている。

韓国では、下請け企業が新技術を開発すると、大企業にみんなタダで奪われてしまう。大企業ではソウル大学卒のエリートたちが自分の功績にして、下請け企業が報酬を求めても聞こえないふりだ。中小企業が「研究開発するだけ損だ」と考えるのも無理はない。開発力が育たないから、いつまでも日本から技術を買うことになる。

韓国で、工学系のエンジニアの地位がとことん低いことも問題だ。財閥系の工場であっても、エンジニアはたいてい中2階のような天井から吊った狭い空間で働いている。汝矣島洞ヨイドドンに林立する立派な事務系のためのオフィスビルとの格差は大きい。

日本のようにエンジニアがものづくりを支えているという意識はなく、米国のように優れた技術を開発したエンジニアがガンガン儲けることもない。社会全体でエンジニア蔑視の風潮を改める必要がある。

同じことは“女性蔑視”にもいえる。私は韓国の梨花女子大学で国際大学院の名誉教授となっているが、女子学生たちの話を聞くと、日本では信じられないほど、世界で活躍したいという希望を持っている。だから必死に英語を身につけ、ボーダーレス経済(国境なき経済)なども勉強している。

もし韓国の財閥系企業に就職したら、女性蔑視が強いから、男性が決めたことに従わないといけない。それよりも国際連合などの国際機関や多国籍企業に就職したいと考えている。将来は、国際機関のアジアを統括する局長などを目指している。しかし女性の多くが「一生独身でいいから、世界で活躍したい」と考えるようになったら、国家としては悲劇としかいいようがない。

5月に就任する尹次期大統領には女性蔑視、エンジニア蔑視などの古い価値観を拭い去り、若者文化を育て、新クオリティ国家を目指してもらいたい。本人も30歳を過ぎた事業家であったキム・ゴンヒ氏と結婚しているから、妻の話に耳を傾けるといい。韓国の人たちが自分の国にプライドを持ち古い価値観を拭い去ることは、日本にとってもありがたいことなのだ。

(構成=伊田欣司 写真=ロイター/アフロ)
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