文在寅ムン・ジェイン大統領の5年間を振り返ると、彼はひたすら南北統一に取り組んできたといっていい。米朝首脳会談では、ドナルド・トランプ前大統領と金正恩キム・ジョンウン総書記の仲介役を務めようと奔走ほんそうし、国連総会では停戦中の朝鮮戦争の終戦宣言を提案した。しかし、成果はほぼゼロだった。

彼は、00年にノーベル平和賞を受賞した金大中キム・デジュン元大統領と同じように、北朝鮮と対話して統一の道を開こうと考えていた。南北統一が実現すれば、人口8000万規模の“グレーターコリア”が誕生し、東アジア第3の強大国となる。軍事費の重圧は軽くなり、産業振興にその分を充てれば、間違いなく世界トップクラスになれると考えていた。

彼はこのビジョンを掲げて選挙に勝ったが、北朝鮮はまともな対話ができる相手ではない。ロシアのプーチン大統領が20年かけて至った独裁者の“異常な状態”が、北朝鮮では金日成キム・イルソンから3代も続いているのだ。そんな彼らに、対話して合意に至り、平和条約を結ぶという基本的な能力は期待できない。金王朝が崩壊しない限り、南北が融和する方向に進む可能性はゼロだろう。

尹次期大統領は、北朝鮮との対話は横において、若者文化や産業の振興に磨きをかけたほうがいい。そもそも韓国の一般国民は、南北統一にあまり興味がない。それよりも、新しい韓国を築きあげるほうが支持されるだろう。

新しい韓国のイメージはすでにある。スマホなどの半導体関連、エレクトロニクス関連、あるいは化粧品などは強い。これから力を入れて育てたい産業はいくつもある。

新クオリティ国家を強調して、国民が自分たちの国に誇りを持てれば、大統領の役割を十分に果たしたことになる。国民が誇りを持てば、日本との関係も恨みごとを抜きにできるはずだ。歴史問題が持ち出されるのは、自分の国にプライドを持てないからだ。

感情的にはまだ終わっていない

韓国の悲哀は、日本にも責任の一端がある。だから朴正煕パク・チョンヒ元大統領の時代、1965年の日韓基本条約で日本は約11億ドルもの経済援助を提供した。韓国は製鉄所や発電所、高速道路、ダムなどを建設し、「漢江ハンガンの奇跡」と呼ばれる経済発展を成し遂げた。

日本人は「あのときに日韓併合時代の補償はすべて終わった」と考えるが、韓国人のほうは感情的にはまだ終わっていない。日本の援助によって工業化に邁進まいしんできたと理解できても、慰安婦問題や徴用工訴訟問題など感情的なわだかまりが残っている。

夫婦喧嘩みたいに、何かの拍子に感情的なわだかまりが爆発し、いきなり茶碗を投げつけて騒ぐのが韓国人的メンタリティーだ。日本が「もう決着はついただろ」と冷静な態度を見せるほど、よけいに頭にくるのだ。