東京ディズニーリゾートのキャスト(従業員)は、園内を清掃中によく質問を受けるという。約8年間、清掃スタッフを務めた笠原一郎さんは「『なにをしているんですか?』とよく聞かれる。来園者たちは『夢のカケラを集めているんです』という返事を期待しているようだった」という――。(第1回/全3回)

※本稿は、笠原一郎『ディズニーキャストざわざわ日記』(三五館シンシャ)の一部を再編集したものです。

新型コロナウイルスの影響による休業から約4カ月ぶりに営業を再開した東京ディズニーランド=2020年7月1日、千葉県浦安市
写真=時事通信フォト
新型コロナウイルスの影響による休業から約4カ月ぶりに営業を再開した東京ディズニーランド=2020年7月1日、千葉県浦安市

アイスクリームが売れる日はキャスト泣かせ

カストーディアルキャスト(※1)は「歩くコンシェルジュ」として、どんなに悪天候の日でもオンステージをひたすら歩きまわって清掃業務やゲストの案内にいそしむ。雪が降ろうが嵐が来ようが、仕事からは逃げられない。

カストーディアルキャストの仕事は、オンステージを清掃する業務とレストルーム(トイレ)を清掃する業務の2種類に分けられる。春や秋の時期、晴れて気持ちの良い日はオンステージ担当がいい。

反対に猛暑や極寒、そして雨や雪の日、レストルーム担当は「勝ち組」と呼ばれてみんなからうらやましがられる。真夏の炎天下、オンステージはキビシイ。地面からの照り返しが強烈である。そのため、実際の気温よりも体感で5℃は高く感じられる。

暑い日にはポップコーンが売れないかわりにアイスクリームやアイスキャンディが飛ぶように売れる。これがカストーディアルキャスト泣かせなのである。溶けたアイスが地面に垂れてシミになる。放置はできないので、モップを持ってきて拭く。そうしているあいだにも、また別のところでアイスが垂れてシミができる。

さらに自販機前では、噴き出したコーラで地面を汚しているゲストがいる。ここにもモップを持って駆けつける。私は汗っかきなので、真夏は掃除中、汗が噴き出してきて粒になってメガネを濡らす。シャツを濡らす。ひどいときにはズボンまで濡れる。

いつゲストに話しかけられるかわからないため、身なりは整えておかなければならず、大量の汗は随時、ペーパータオルで拭いていた。ところが、ある日の朝礼でSV(※2)から「ペーパータオルは業務用の使用に限り、汗拭きに使わないように」という禁止令が出た。しかし、ハンカチではすぐにびしょ濡れになり、役に立たなくなる。タオルを首からかけて作業をするわけにもいかない。

やはり夏の日のカストーディアル業務にはペーパータオルが必須なのだ。SVのケチな禁止令を無視して私は大量の汗をペーパータオルでぬぐい続ける。

(※1)おもにパークの清掃業務を担当するキャスト。キャストの数ある職種の中でも上位の人気を誇る。
(※2)スーパーバイザーの略。現場ごとに配置され、キャストをまとめて指導・監督するプレイングマネージャー。カストーディアル部門ではロケーションごとに数名配置されている。