箱根駅伝はどの大学が優勝するのか。本命視されるのは前回総合優勝し「令和の常勝軍団」を目指す駒澤大学。1995年から指揮を執る大八木弘明監督は以前、選手に丸刈りを強制し「バカ、やめちまえ」と尻を叩いたが、今はソフト路線。スポーツライターの酒井政人さんは「豪快なキャラに見られがちですが、練習時に0.5秒単位のラップタイムにもこだわる繊細で合理的なデータ主義の指導者です」という――。
大八木弘明監督
写真=時事通信フォト

箱根駅伝の優勝候補・駒澤大学、大八木監督の「知られざる側面」

「男だろ!」

前を走る選手を後方の車から鼓舞するその力強い声が沿道に響く……。もはや箱根駅伝名物と言ってもいいだろう。日焼けした肌に、鋭い眼光。還暦をすぎてなお、ギラギラしたものを放っている。

駒澤大・大八木弘明監督(63)。

多くの読者は、「体育会体質の昭和の人」だと感じているだろう。筆者も最初はそう思っていた。でも違った。実際は逆で、非常に緻密で繊細でインテリジェントな人だったのだ。

指導者としてはこれまで、出雲・全日本・箱根の学生3大駅伝でチームを最多「24」の優勝に導くなど「超一流」の実績を誇る。では、自身の選手時代はどうだったのか。聞けば、これがかなりの苦労をしたようだ。

「辛酸をなめた経験が現在の指導スタイルの“源”になっていますね」