これまで培った知見やスキルを海外で生かすことができ、新たな気付きやつながりも得られるJICA海外協力隊。ザンビアで2年間活動した澤村啓之氏と、隊員の現地取材をしたことがあるフリーアナウンサーの草野満代氏がその魅力を語り合った。

現地の人と協力しながら同じ目線で活動できる

【草野】ザンビア国立産業訓練センターで日本的経営を指導されたとのことです。海外で活動したいと考えたきっかけは何だったのですか。

草野満代(くさの・みつよ)
フリーアナウンサー
1989年にNHKに入局。報道番組のキャスター、「紅白歌合戦」の総合司会などを担当する。97年よりフリー。「筑紫哲也NEWS23」のサブキャスターを務めたほか、現在はテレビ朝日系列「ごはんジャパン」など、多くの番組で活躍する。

【澤村】かつて勤務していた石油会社でアブダビに駐在し、採掘技術の指導や人材育成に関わりました。時を経て、10年近く前に同国を久々に訪れた際、その発展ぶりに驚かされたんです。そこで、60歳になったら組織人としての活動に区切りを付け、自分の知見を他国の発展に生かそうと決めました。

【草野】年を重ねると、「今後、自分はどう社会と関わっていくのか」という課題が現実味を帯びてきますね。私も最近、第二の人生は今までの積み重ねを生かしながらも、何か別なことに挑戦したいと考えることがあります。

【澤村】私は主に人事畑で仕事をしてきたので、そこに軸を置きつつも、海外で一個人として活動したいと思いました。JICA海外協力隊は、現地の人たちと協力しながら、同じ目線で活動していける。自分の判断で行動できる裁量の大きさも魅力でした。

【草野】以前、アフリカや中南米で活動する隊員を取材し、その姿勢に感銘を受けました。現地の方と日々地道な活動を積み重ね、着実に成果を上げていく。隊員に寄せられる信頼は非常に深く、こうした関係はなかなか築けないだろうなと感じました。

【澤村】JICA海外協力隊が提供するのは、まさしくソフト面の協力。人を介した息の長い活動は、現地の人の心に長く残っていきますね。

【草野】相手国にも、日本側にも価値あることだと思います。澤村さんは、どのように活動を進めたのですか。

【澤村】最初に現場の課題を探るため、約30人いる学校の先生や職員全員と面談を行いました。こちらのことも知ってもらいながら話をすることで、互いの距離も縮まったように思います。

【草野】澤村さんが自ら飛び込んできてくれる人だと分かったんでしょうね。

【澤村】結果、スタッフ間のコミュニケーションに課題があることが分かったので、全員で取り組めるものとして、生徒も含めた清掃活動から開始しました。初めは日本式の丁寧な掃除を面倒がる人も多かったのですが、従来と異なる仕上がりに皆が納得。その後は実習棟のペンキ塗りなども実施し、最後は改善活動に進んで、ザンビアのKAIZEN全国大会で銀賞を受賞しました。

教職員、学生総出で行ったペンキ塗り。チームワークの向上と学校への帰属意識の向上に役立った。

【草野】小さなことから始めて成功体験を重ね、目標を達成していったのが成功の鍵ですね。活動に当たっては、JICAのサポートもあるのですか。

【澤村】はい。派遣前訓練もありますし、派遣後は裁量権がある一方、何かあれば現地にいるJICAの企画調査員に相談が可能。安全管理など生活面のサポートもあるので、活動に集中することができます。

美しく年を重ねるにはさまざまな経験が大事に

【草野】実際に現地で活動して、ご自身に変化はありましたか。

【澤村】ザンビアの経済や社会、そして人の考え方に触れ、今まで自分が当然だと考えていたことがそうでないことを実感。幸福や本当に大切なものを見つめ直す2年間になりました。

澤村啓之(さわむら・ひろゆき)
JICA海外協力隊経験者
1981年に日本鉱業株式会社(現ENEOS株式会社)に入社。主に人事業務を担い、30代でアブダビへの駐在も経験。その後イスラエル系企業などで人事業務に携わった後、JICAの海外協力隊へ。現在は企業や個人向けの講演などを中心に活動。

【草野】多くの刺激を受け、新たな気付きも得られた。貴重な機会でしたね。

【澤村】本当にそう思います。また、派遣前訓練で一緒だった若手隊員、ザンビアで別の活動をしていた若手隊員との出会いも貴重なものです。今でもつながりがありますが、その吸収力や前進力の高さには大いに感心させられ、エネルギーをもらっています。

【草野】年齢を超えた連帯感やつながりが生まれるのはいいですね。澤村さんも抜群の行動力をお持ちですが、そのバイタリティはどこから来るのですか。

【澤村】「美しく年を取っていく人間でありたい」というのが私のポリシー。それには年齢に応じて、節目節目でさまざまな経験を積んでいくことが大事だと感じています。

【草野】美しく年を重ねたいというのは誰もが持っている思いです。実際、アナウンサーとして多くの方にお会いする中で、人の表情やたたずまいにはその方の生き方が表れると感じたことが何度もありました。

【澤村】派遣先では、ものの見方の幅が広がった一方で、「組織の中で連結ピンとなれ」「冷静な目と温かい心を持つ」といった私のビジネス哲学が海外でも通用することを確認できました。現地での経験に何一つ無駄はなく、次のキャリアの可能性が上にも横にも広がったと実感しています。

【草野】お話を伺っていると、私も前向きな気持ちになります。今までの活動や、今の自分の思いを生かして、新しい貢献の形を作っていくフィールドがあると感じられました。

【澤村】JICA海外協力隊は必ずしも特殊な技術や知識を届けることが目的ではありません。日本で仕事をする中で学んだ核の部分はきっとどんな現場でも役立つし、何より現地の方の間に日本人という異分子が入ることで新たな化学反応が生まれます。

【草野】最後に隊員としての活動に関心を持つ人にメッセージをお願いします。

【澤村】勇気を出して一歩踏み出せば、ドアは開く──。いざ海外で活動するとなれば、不安もあるでしょうが、JICA海外協力隊は確かな実績もありますし、海外が初めての人へのバックアップ体制も整っている。興味があれば、ぜひチャレンジしてみてほしいと思います。私自身、二度目の派遣を目指しているところです。

活動分野は多種多様。69歳まで応募ができる

開発途上国で、現地の人たちと共に国づくりに貢献するJICA海外協力隊。かつての年齢による区分はなくなり、幅広い職種で応募可能な「一般案件」と一定以上の経験・技能等が必要な「シニア案件」の2つに分かれている。対象年齢はいずれも20~69歳。募集は原則、春と秋の年2回。活動分野には、以下の通りさまざまなものがある。

●活動分野の例
コミュニティ開発/コンピュータ技術/野菜栽培/電子工学/自動車整備/経営管理/青少年活動/スポーツ全般/理科教育/小学校教育/看護師/感染症・エイズ対策/障害児・者支援 など

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