経営陣にとっては「空箱を積む」のが一番楽

ここで現場のリーダーがまず考えるべきは、その目標が本当に「空箱」なのかを客観的に判断することです。もし、努力して達成できるものなら、事業責任者としてそれを目指すのがリーダーの本来の姿です。ただし、どう考えてもそれが「空箱」であるならば、ギリギリまで粘って売上を詰めることがむしろ、会社や部門のマイナスになる危険性があります。

青い背景に空のダンボール箱
写真=iStock.com/vejaa
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そもそもなぜ、会社は「空箱」を積むのか。経営陣にとっては空箱を積むのが一番楽だからです。現場からの数字と目標に大きな乖離があるのなら、本来、思い切った戦略の変更や、部門の縮小やリストラなどの施策を考えるべきです。ただ、こうした決断にはリスクや痛みが伴います。一方、「何も変えずに、みんなで頑張って売上を積み上げましょう」なら、誰も傷つけず、組織の一部に手をつけるようなリストラも先送りできるのです。つまり「空箱を積む」というのは、「問題の先送り」でもあるのです。

こうした会社でありがちなのが、いわゆる「テイルヘビー」な目標です。年間計画のうちの下期の、それも最後の1、2カ月に「新製品が出ます」「大型受注が入ります」と、膨大な目標が組まれる。そうして、どの部門が最後まで粘るかのチキンレースを繰り広げた結果、「頑張ったのですが、残念ながら……」と言い訳をする。それが繰り返されるのです。

これが常態化すると、誰もが目先の売上達成しか考えなくなり、あげくコンプライアンス上問題となるような手段を取ってしまうようなケースも出てきかねません。結局は中長期的に衰退することになってしまいます。

捨てられる勇気を持てば、捨てられない人材になれる

では、空箱を押しつけられたリーダーは、どうすべきか。まずはあくまで経済合理性に基づいて、中長期的に自分の事業を精査します。その結果、どう考えてもダウンサイジングが必要なら、こちらから先に提案してしまうのです。

一方、大規模な資金を投じれば、必ず業績が上向くという自信があるのなら、いっそ外部と組むのも手です。資金を投じてくれる、あるいは事業ごと買収してくれるスポンサーを見つけてしまうくらいのことをやれば、会社も無視できなくなります。つまり、会社ではなく「事業」を考えるのです。

当然、クビを覚悟でやることになります。ただし、ここまで腹をくくった案を出すあなたを、会社も無視できなくなります。つまり、捨てられる勇気を持てば、結果的に捨てられない人材になれるのです。

今回のケース、そしてこの本すべてを通じてお伝えしたいのは、前例を踏襲すればいい業界などほとんどなく、だからこそリーダーは変化するリスクを取らなくてはならない、ということです。