「俺が逮捕されれば裏金のことも全部ぶちまける」“日大のドン”田中英寿理事長が口にする“不穏な言葉”(西﨑 伸彦/週刊文春 2021年9月23日号)

約7万人の学生数を誇る日本最大のマンモス校、日本大学の中枢についに司直の手が伸びた。9月8日、東京地検特捜部は、日大の本部、そして最高権力者である田中英寿理事長(74)の自宅などを背任容疑の関係先として家宅捜索した。

田中英寿・日大理事長

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検察担当記者が語る。

「疑惑の舞台は日大医学部附属板橋病院です。老朽化による建て替え計画が進んでおり、予算規模は1000億円という大プロジェクト。日大は昨年、基本設計を24億円で設計会社『佐藤総合計画』に発注しているのですが、そのうち約2億円が不正に流出し、大学に損害を与えたとみられているのです」

契約は、日大が全額出資して2010年に設立された株式会社「日本大学事業部」が行なった。大学の納入業者の選定を一手に仕切り、大学のグッズの企画・販売や職員の物品購入から学生寮の管理、保険代理業まで担う組織だ。そのキーマンが日大の理事で、日大事業部の取締役も兼務する田中氏の最側近、井ノ口忠男氏(64)である。

佐藤総合計画を日大に紹介したのは…

地検関係者が明かす。

「井ノ口氏が、佐藤総合計画に対し、約2億円を大阪の医療法人『錦秀会』の籔本雅巳理事長の右腕が社長を務める港区の医療コンサル会社に送金するよう指示したとみています。そもそも籔本氏は井ノ口氏を通じて田中氏の知遇を得、14年には日大出身の力士、遠藤関の後援会長を務めて日大との関係をさらに深めました。その後、田中氏が会長を務める国際相撲連盟の副会長にも、籔本氏は名を連ねた。特捜部は今回の契約に医療コンサルを入れる必要があったのか否かに着目している」

捜査は、証券取引等監視委員会からの告発案件などを担当する経済班が担うが、班を率いる副部長は、日産のカルロス・ゴーン事件の主任検事を務めた強硬派だ。

「佐藤総合計画を日大に紹介したのは、自民党の故野中広務元官房長官の元秘書です。彼が日大と取引のある葬儀業者を通じて田中氏に持ち込んだ。この元秘書は今夏、コロナで亡くなっていましたが、葬儀業者に詳しく事情を聴いた特捜部は、一気に勝負に出たのです」(同前)