〈不妊、血栓症、逆に重症化、5G、磁石…〉“反ワクチン本”のウソを医学的・科学的にしっかり検証(忽那 賢志/文藝春秋 2021年10月号) #2

「読んではいけない反ワクチン本」 遺伝子改変、不妊、何年か後に副作用…偽情報を徹底検証 から続く

「文藝春秋」2021年10月号より「読んではいけない『反ワクチン本』」(大阪大教授・忽那賢志氏)を全文公開します。(全2回の2回目/#1から続く)

科学的に正しくない記述(4)
「ワクチンを打つと不妊になる」

高橋徳・中村篤史・船瀬俊介『コロナワクチンの恐ろしさ』成甲書房

〈米CDCの報告では、コロナワクチン副反応報告の80%は女性の被害だった。訴えは「生理が止まった」「不妊になる」など〉(『コロナワクチンの恐ろしさ』p.55)

反ワクチン情報で若い世代を特に不安にさせているのが、不妊症や流産についてのものです。

最初に申し上げたいのは、一般的に、ワクチンで不妊や流産が誘発されたという事例は過去、見られないということです。例えば、インフルエンザワクチンは妊婦さんでも打つことが出来ますが、これまで流産の問題が生じたことはありません。

不妊にかんする誤情報は、ファイザー社の元ヴァイス・プレジデントとされている人物がネット上に流した主張がきっかけだったようです。新型コロナワクチン接種によって体内でつくられる抗体が、胎盤にあるシンシチン-1というタンパク質に反応し、胎盤を攻撃する可能性があると主張しました。

新型コロナのスパイクタンパクとシンシチン-1の構造が類似しているため、抗体が誤って攻撃するというのです。

しかし実際にシンシチン-1とコロナウイルスのスパイクタンパクの構造を比べてみると、アミノ酸の配列が同じ個所がわずかにあるものの、類似性はそれ以外に見当たりません。両者は十分に違う構造なので、スパイクタンパクに対する抗体が、シンシチン-1に対して交差反応(間違って反応すること)を起こさないことは確認されています。