身勝手な隣人や同僚のせいで、いつも損をする。「許せない」という気持ちが抑えられない。いったいどうしたら? 下町和尚として人気の名取芳彦住職は「“怒り”はあっていい、でも“自分の怒りのツボ”を知ろう」と言います。セブン‐イレブン限定書籍『不安の9割は起こらない』より、心穏やかな毎日を手にするマインドセットのコツを特別公開します──。(第1回/全4回)

※本稿は、名取芳彦『不安の9割は起こらない』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

私たちは本質的に仏さまと同じ

私は東京の小岩で、「密蔵院みつぞういん」という真言宗のお寺の住職をしています。「もっとい不動」とも呼ばれる下町のお寺ですが、地元のみなさんだけでなく、インターネット時代の現在、全国の方々とも深く、あたたかい交流をさせていただいています。

私の属する真言宗の開祖は、日本史上最高の天才といわれる弘法大師空海ですが、お大師さまは私たちに「三密」が大切である、と教えてくださいました。

お大師さまがおっしゃる「三密」とは「しん」。つまり、私たちが体と言葉と心の3つで行う行為は、本質的に仏さまのそれと同じだからとても大切ですよ、ということで、不肖私も、この教えに従って修行の道に励んでまいりました。

ところが昨今、未曾有のコロナによって、「三密」を避けろ、というのが世の中でいちばん大切なテーマとなってしまったのは、ご存じの通り。

口をぎゅっと結ぶ若い女性
写真=iStock.com/SetsukoN
※写真はイメージです

「三密を避けろ」で殺伐とした世の中に

もちろん、お大師さまの「三密」と、政府や各自治体が盛んに呼びかけている「三密」は内容がまるで違います。今、みんなで守ろうとしているのは「密閉」「密集」「密接」という三密を避けろ、です。

ただ、この「三密を避けろ」は、やさしく言えば、「人との親しい集まりやふれ合いや会話」を避けろ、ということ。現実的には、「人のぬくもり」などはまったく感じられない世の中にしなさい、と言っているようなものでもあるわけです。

これは、ちょっと辛いなあ、と思います。こうなると、これまで以上に人の世の生きづらさを感じざるを得なくなります。

人に不寛容で、妙に怒りやすくなる。人のやっていることが気になってしようがない。人との接触が避けられる中でますます孤独を深めていく。あるいは、一時減っていた自殺が「コロナ禍自殺」という名前でまた増えているという話も聞きます。