大型車の高速走行では、エネルギー消費の4割以上が空気抵抗だといわれる。このためクルマが自動運転にかわり、車同士で車間距離を調整できるようになれば、燃費が大幅に改善されると考えられている。ジャーナリストの中村尚樹さんは「車間2メートルの無人隊列走行なら、トラックの燃費は25%も改善するといわれている。このためには5Gの導入が欠かせない」という――。

※本稿は、中村尚樹『最前線で働く人に聞く日本一わかりやすい5G』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

トンネル内を、自動運転技術を使って隊列走行
提供=ソフトバンク
トンネル内を、自動運転技術を使って隊列走行

法律で認められている自動運転の内容

自動車に代表されるモビリティに関連したキーワードとして、“CASE”が注目されている。「自動車がインターネットでつながること」「自動運転」「シェアリング」、それに「電動化」を意味する4つの英単語の頭文字を並べて作った言葉だ。中でも5Gで特に注目されているトピックスのひとつが、自動運転に関する話題である。改正された「道路交通法」の一部と「道路運送車両法」が2020年4月に施行され、自動運転は「レベル3」の段階に入った。

自動車の自動運転技術は通常、0から5まで6段階のレベルで定義されている。レベル0は運転の自動化がない、従来のタイプである。レベル1は「運転支援システム」で、ステアリング、アクセル、ブレーキのいずれかをシステムがサポートする。レベル2はADAS(Advanced Driver-Assistance System=先進運転支援システム)と呼ばれ、ステアリングと、アクセル、ブレーキのうちの複数の操作をシステムがサポートする。2015年にアメリカのテスラがはじめて実用化した。レベル2までは、あくまで運転するのはドライバーであり、いわゆる「自動運転」のカテゴリーには入らない。

レベル3で「条件付き運転自動化」となり、クルマが運転の主体となる「自動運転」の世界になってくる。条件付きで自動運転が可能となるが、緊急時はドライバーが対応しなければならない。

レベル3の法律改正ではドイツが先行したが、EUがレベル3を認めていないため、法的に実用化の問題がクリアされたのは、日本が世界ではじめてである。

法律で解禁されても実用化できるとは限らない

法律でレベル3が解禁されたといっても、省令や告示で様々な制約が課せられている。実際に可能な自動運転はいまのところ、高速道路で乗用車が車線変更をせずに、同一車線を低速走行する場合に限られる。

乗用車に比べて重量が重く、車体も大きなトラックは、まだ自動運転の対象とはされていない。

レベル4の「高度運転自動化」が可能となれば、基本的にはすべての運転操作をシステムが担うことになり、運転手の負担は大きく軽減される。レベル5の「完全運転自動化」となると、運転は機械任せにでき、「無人トラック」が実現するかもしれない。

ただ残念ながらレベル4以上になると、技術的にも、法的にも課題が多く、いつ実現するのかわからない。そこで運輸業界は、乗用車とは違った自動運転のアプローチに注目している。それが自動運転技術の中でもすでに実用化されているレベル2の先進運転支援システムを使った隊列走行だ。