仕事の視野を広げるには読書が一番だ。書籍のハイライトを3000字で紹介するサービス「SERENDIP」から、プレジデントオンライン向けの特選記事を紹介しよう。今回取り上げるのは『40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか』(DOJIN選書)――。
熱波が続く日本
写真=iStock.com/rockdrigo68
※写真はイメージです

「命に関わる危険な暑さ」に体は耐えられるのか

日本の夏の暑さが、尋常ではなくなっていると感じる人は多いだろう。

最高気温35℃以上の「猛暑日」も珍しくなくなり、30℃くらいでは「それほど暑くない」という人も。

しかし、「命に関わる危険な暑さ」と天気予報で注意喚起が連呼される日々に、日本人の体は耐えていくことができるのだろうか。

本書では、主に「人体の体温調節」のメカニズムに焦点を当てつつ、タイトルの「40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか」の答えを科学的に解き明かす。

気温の上昇は、湿度、風、日光などの他の環境要因と合わせて、皮膚の表面近くにある空気の温度を上げる。

人間は生命維持に重大な体の中心部の温度を一定に保つために、皮膚血管などを通じて外部に熱を発散しているのだが、皮膚の回りの温度が上昇すると、その発散がうまくいかなくなる。

そのために体の中心部が高温になると、場合によっては生命に関わることもある。

著者は早稲田大学人間科学学術院の永島計教授。専門は生理学、とくに体温・体液の調節機構の解明である。

1.環境と人の関係
2.カラダの温度とその意味
3.カラダを冷やす道具たち
4.温度を感じるしくみ
5.脳と体温調節――考えない脳の働き
6.フィールドの動物から暑さ対策を学ぶ
7.熱中症の話
8.運動と体温
9.発達、老化、性差など
10.温度や暑さにかかわる分子や遺伝子
おわりに 40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか

人のカラダは温度の変化に対して非常に脆い

人はもともと生存に適さない環境でも、衣服や居住構造や建築物、広範に土地改良を加えることによって、生存可能な場所にしてきた。『40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか』の答えは、私のような生理学の研究者が答えなくても、人類の歴史が答えてくれている。それは、“イエス”である。人はどこへでも工夫を凝らして到達する。選ばれた人たちだけではあるが、宇宙でも暮らしているのであるから。

アフリカ大陸のチュニジアにあるケビリ県は、約15万人の居住人口を持つ。7、8月の平均最高気温が42℃程度。ロシアのオイミャコンは、500人程度の定住者がいて、12、1月の平均気温がマイナス50℃程度である。特別な人でなくてもどこでも暮らせるものである。

しかし、人の「体温」の許容範囲が、居住地域の気温と同様に幅広いかというとそうではない。体温が34℃以下になると低体温症で、生命活動の維持が危うくなってくる。高いほうの体温は、個人差が大きいが、43℃を超えて長くカラダが耐えられる能力を持つ人はまずいない。細胞の構造的、機能的に不可逆的な(温度が正常に戻っても元どおりにはならない)変化が生じる。

生きている人の体温の許容範囲は大きく見積もっても10℃以内の変化である。普通の生命活動と定義した場合は6℃以内である。人のカラダは、基本的に温度の変化に対して非常に脆い。極限で生きていけるのは、ほかの動物に比べて、自分の体温を維持するためのより優れた方法、正確にはカラダの周囲の環境を適切に維持する能力を持ち合わせているからにすぎない。