「相変わらず男女不平等だ」と憤慨するが…

「人間は自分が見たいものしか見ようとしない。たとえそこに存在していても目に入らない」といわれます。しかし、度を超すと、「見たい願望があれば、存在していないものですら、存在すると信じてしまう」ということも起こります。

和朝食を準備する女性
写真=iStock.com/kazoka30
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2021年3月31日に、「世界経済フォーラム」から世界各国の男女格差を測る「ジェンダーギャップ指数」が発表されました。簡単に説明すると、「経済」「教育」「健康」「政治参加」という4分野の男女格差をまとめて指数化したものです。2020年の日本の順位は156カ国中120位、G7の中でも最低だとマスコミはこぞって取り上げ、呼応して「日本は相変わらず男女不平等である」と憤慨する声がSNS上でも数多く沸き起こりました。

しかし、個人的には、正直このランキングにどれほどの意味があるのか疑問です。そもそも指標の取り方が独特で、作成者の恣意しい的なものが強く感じられます。

このデータをよりどころに議論が飛躍している

同様の疑問は、「社会実情データ図録」の主宰者でもある統計分析家の本川裕氏も「世界120位『女性がひどく差別される国・日本』で男より女の幸福感が高いというアイロニー」で見解を書いています。その内容には大いに賛同します。

「ジェンダーギャップ指数世界120位」という言葉だけを取り上げて、政府や世の男性に対する糾弾材料として活用する向きが多いようですが、であるならば、本川氏のいう、国連開発計画(UNDP)が類似の調査を行った「ジェンダー不平等指数(2020年度、日本は162カ国中24位)」について、そうした論者もマスコミも完全に無視しているのは、まさしく不平等です。

本当に男女不平等が存在するなら、その是正は大事でしょう。しかし、この「ジェンダーギャップ指数」のデータだけをよりどころにして、「男女格差が少なければ少ないほど出生率は上がる」「少子化対策するなら、まず男女の賃金格差をなくせ、女性の管理職比率を上げろ、女性の議員数を増やせ」という飛躍しすぎた論まで出始めると、さすがに「ちょっと待て」と言いたくもなります。

そうした男女格差をなくせば本当に出生率は上がるのでしょうか?