コロナショックを受けなかったのは常連客がいる企業・店舗

この事例で重要なのは、「顧客を持っていた」ということだ。フローのお客ではなくストックの顧客を持っていたことなのである。

フローとは「流れ」を意味し、一定期間内に流れていくもの。一方、ストックとは「貯蓄されたもの」である。これをマーケティングの世界に置き換えると、「フロー=一見客」「ストック=常連客」ということになる。

コロナショックの影響を受けなかったのは明らかに、ストックされた顧客を保持している「ストック型のビジネス」を行っていた企業や店舗であった。

フロー型のビジネスの象徴とも言えるのが、今回、大打撃を受けることになった「好立地の場所での商売」だ。人通りというフローがなるべく多いところに出店し、常に一見客が途切れないようにする。だが、フローが途切れるとあっという間に危機に陥る。

一方、「ストック型のビジネス」においては、既存顧客を徹底的に重視する。もちろん、フローも大事だが、それよりも既存顧客と継続的にコミュニケーションを取り、長く付き合っていくことを目指す。立地は必ずしも重要ではない。だから、フローがしばらく途切れてしまっても生き残ることができる。

新橋の繁華街
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「生きた顧客リスト」を持っているか

コロナショックによる自粛期間中、企業の明暗を分けたのが「顧客リストの存在」だ。コロナ禍によって顧客が「消滅」し、店舗すら開けられない状態になった。多くの店が手も足も出ない状況になった。しかし、顧客リストさえあれば、手や足を出すことができた。先の「ばんどう」もフェイスブックなどを通じて顧客に発信した。

ただ、リストは、単なる名簿では意味がない。顧客リストのお客さんに対して常にいろいろな働きかけをすることで、リストを活性化させ「生きた顧客リスト」にする必要がある。これを私は「リストを温める」と呼んでいる。

まず、温める。たとえば有益な情報を定期的に提供したり、無料イベントに招待したりする。そうして仲良くなったあとに、「実はこんな商品があるのですが」とお勧めする。それによってやっと、ごく一部の人が購買行動を起こしてくれるのである。

モノを売るために関係を深めるのではなく、あくまで、まずは信用や信頼を醸成することだ。その信頼関係あってこそ、人は「買ってもいいかな」という気持ちになる。そして、その先にあるのが「ファンダム」の世界だ。

ファンダムは、「ファンコミュニティ」「会員組織」と言い換えることも可能だ。顧客消滅時代にはいかにして「ファンダム」を作り、育成していくかがあらゆる企業・店に問われる。