海外で自らの経験やスキルを生かすことができ、新たな自分にも出会える。そんなJICA海外協力隊がシニア層からも注目を集めている。フリーアナウンサーの草野満代氏が、ヨルダンとメキシコの2カ国での活動経験がある岡田洋氏に現地での活動や帰国後のセカンドキャリアなどについて聞いた。
草野満代(くさの・みつよ)
フリーアナウンサー
1989年にNHKに入局。報道番組のキャスター、「紅白歌合戦」の総合司会などを担当する。97年よりフリー。「筑紫哲也NEWS23」のサブキャスターを務めたほか、現在はテレビ朝日系列「ごはんジャパン」など、多くの番組で活躍する。

【草野】岡田さんはメーカーでエンジニアをされていたとのことですが、JICA海外協力隊への参加は退職前から考えていたのですか。

【岡田】定年後の第二の人生は、開発途上国の人たちのお役に立ちたいとの夢を持っていました。また、観光ではわからない現地の人の考え方や暮らしぶりに触れてみたい。そんなふうに思っていました。

【草野】最初は2010年から2年間、ヨルダンに行かれたんですよね。

【岡田】募集要項を見ると、IT、インフラ関連、医療福祉、品質管理、電気・電子機器、教育などさまざまな分野があり、派遣国も多彩。そのなかから、ヨルダンの国立職業訓練センターの運営改善プロジェクト(職種:学校運営)に応募しました。

【草野】私も最近、「第二の人生をどうしようか」と考えることがありますが、つい「今、自分がしていること」にとらわれてしまいがちです。岡田さんは、教育施設の運営という、ある面では未知の仕事に挑まれた。不安はありませんでしたか。

【岡田】もちろんありましたが、問題を見つけて分析し、解決方法を考えて目標に向け進めていくプロジェクトマネジメントの経験は生かせるだろうと考えました。派遣前には約2カ月半の語学研修などもあり、現地ではJICA事務所による活動支援や健康管理の支援なども受けられました。

【草野】そうしたサポート体制があるのは心強いですね。実際の活動はどのように進められましたか。

【岡田】センターの運営改善という大きな目標はありましたが、どう実現するかは隊員個人に任されています。そこでセンター長へのヒアリングや訓練現場の調査を行い、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を推進することに決めました。

【草野】なるほど、自ら課題を見つけて解決策を考えられた。日本生まれの5Sを教えるのは難しくなかったですか。

【岡田】実際にやってもらうのが一番と考え、独自に編み出したゲームなども取り入れた訓練器材を使って、メリットを実感してもらいました。この方法はわかりやすいと好評で、多くの人たちに教えることができ、やりがいを感じました。帰国後、きれいに整理・整頓された現場の写真が送られてきたときはうれしかったですね。

【草野】自分の知識やスキルによって人が喜んでくれると、こちらも大きなものを与えてもらえますね。そして2014年には、次の任地のメキシコに向かわれました。

【岡田】もう一度、考え方や文化の異なるところで協力隊として活動したいとの思いからです。派遣先は公立の工科大学(職種:品質管理・生産性向上)で、5Sの普及のほか、大学側の強い要望で日系企業の仕事を請け負えるように現地企業の競争力を高める地域センターの創設にも取り組みました。

メキシコでの活動の様子。オリジナルのツールを使い、5Sのポイントを指導している。

【草野】今度は組織づくりを担われた。

【岡田】構想の段階、いわばゼロから形にする仕事でした。産学連携事業の構築のため現地の日系企業へ協力を要請し、企業と大学をつなぐなど、会社員時代には経験のなかった営業や渉外もこなし、JICAの現地事務所とも連携しながら、なんとか枠組みをつくり上げることができました。

人間の幅が広がり仕事の楽しさを強く実感

【草野】ヨルダンもメキシコも、地域に根差した活動ですね。私はJICAの活動を現地取材したことがありますが、息の長い地道な活動が各国の方の心に深い信頼とともに残っているという印象を受けました。

岡田 洋(おかだ・ひろし)
JICA海外協力隊経験者
1972年に富士重工業(現SUBARU)に入社。プロジェクト・エンジニアとして、ヘリコプターの研究開発などに携わる。JICAのシニア海外ボランティア(現 JICA海外協力隊)として活動した後、株式会社ユーユーワールドに入社。

【岡田】一方でこちらも現地の人と触れ合うなかで大きな影響を受けることになります。宗教と共に生きるイスラム圏の人たちのもてなしの心、メキシコの人たちの自由な生き方に触れ、私の人生観も変わりました。

【草野】特にどのようなところが印象に残りましたか。

【岡田】メキシコの人たちはお金や時間にあくせくせず人生を謳歌しますし、どちらの国の人たちも困っている人に優しい。私も帰国後は何か人助けをしようと考え、ボランティアで日本語を教えています。赴任時に学んだスペイン語を生かしてボリビアから来た中学生の学習支援も行い、その子は無事日本の公立高校に入学しました。

【草野】素晴らしいですね。現在、介護施設を持つ企業で介護人材育成に関するお仕事もされていると聞きました。

【岡田】帰国後、JICAの催しを通して知り合った社長の誘いで入社、今は介護職員の初任者研修の立ち上げなどを行っていて、人材不足で悩む介護業界のため尽力するつもりです。社内外の関係者と目標を共有し、壁を乗り越えながら最適な研修を組み立てていく業務で、JICA海外協力隊で培った前向きに粘り強く進める経験や、初対面の人との交渉やコミュニケーションがとても役に立っています。

【草野】ご自身の仕事の幅や可能性を広げられたことが、セカンドキャリアにつながっているんですね。

【岡田】現地では苦労もありましたが、人のために働くことの楽しさややりがいを強く感じることができました。それが今、大きな支えになっています。

【草野】私も「年を取ったら毎日のんびりできればいい」というタイプではないので、やりたいことに誠心誠意取り組んで、人に感謝され、自分も成長していく。そんな毎日を送りたいと岡田さんのお話を聞いて改めて感じました。

【岡田】JICA海外協力隊での活動は、まさにそうした人生を手に入れるきっかけになり得ると思います。

【草野】年齢に関係なく、夢や目標を持つことは大事ですね。今日は貴重なお話をありがとうございました。

活動分野は多種多様
69歳まで応募ができる

開発途上国で、現地の人たちと共に国づくりに貢献するJICA海外協力隊。かつての年齢による区分はなくなり、幅広い職種で応募可能な「一般案件」と一定以上の経験・技能等が必要な「シニア案件」の2つに分かれている。対象年齢はいずれも20~69歳。募集は原則、春と秋の年2回。活動分野には、以下の通りさまざまなものがある。

●活動分野の例
コミュニティ開発/コンピュータ技術/野菜栽培/電子工学/自動車整備/経営管理/青少年活動/スポーツ全般/理科教育/小学校教育/看護師/感染症・エイズ対策/障害児・者支援 など

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