新型コロナウイルスのワクチンを接種すれば、マスクを付けなくてもいいのか。聖路加国際大学公衆衛生大学院の大西一成准教授は「ワクチンを接種してもマスクを付けたほうがいい。1つだけの感染対策に頼ってしまうと、それがたまたま破綻したときに感染が起きてしまうからだ」という——。
マスクを着用した若い日本人女性
写真=iStock.com/west
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そもそも何のためにマスクを着用するのか

新型コロナウイルスの感染対策でマスクを着用するようになって、1年以上が経過した。不織布のマスクのほうが良い、マスクを二重にすると良いと言った情報があふれてきているが、いずれも言葉足らずと言わざるを得ない。

不織布のマスクを着用していても、マスクと顔の隙間から飛沫が出入りすると感染を完全に防ぐことができない。また、マスクを二重にすると上から押さえられることでフィット性が向上するという部分だけが切り取られて報道されているが、二重マスクでは、上から押さえたマスクが、下のマスクを歪めてシワができてしまうことで、逆に隙間ができてしまいフィット性が破綻してしまうことや、厚くなったフィルター部分を呼気が通りにくくなり、顔の隙間からより漏れやすくなっていることもあるという点にも十分に注意を払わなければならない。

そもそも1年前の今頃は、コロナ対策といえば手洗いと3密回避のみで、マスク着用の啓発が意識的に控えられていた。その背景には、マスク不足やWHOによるマスクには予防効果はないという発表があった。

3月9日に米国CDC(疾病対策センター)が、ワクチンを接種した人のマスクの着用などに関する初めての指針を公表した。接種した人どうしであれば、屋内でマスクなしで集まってもリスクは低いとしている。

だが、感染しない、感染させないためには、マスク着用の啓発のみでは不十分である。何のためにマスクを着用するのか、マスクを着用することでどのように感染対策に役立つのかといった、感染対策の基本的な仕組みを理解することによって、ワクチン接種後もおのずと自分がしなければならない行動が決まってくるものである。

ワクチンの効果は100%ではない

感染流行期には、「手洗いだけ」「マスクだけ」「ワクチンだけ」では十分な感染対策にはならないということを念頭に置いて生活をしていかなければならない。

つまり、「たまたまマスクと顔の間に隙間ができていた」「たまたまワクチンが効かなかった」「たまたま手を洗うのを忘れて顔を触ってしまった」というようなことが起こりうる以上は、同時に複数の対策を行わなければならない。

臨床試験結果を踏まえると、新型コロナウイルスワクチンの発症予防効果と重症化予防効果は非常に高いが、効かない可能性が絶対にないとは言えない。

ワクチンの効果には個人差がある。今回のワクチンによる抗体効果の持続期間の追跡調査は、ワクチン接種と同時進行であるため、いつまで抗体の効果が持続するのかはまだ分からないという状況がある。

また、感染が繰り返されている間は、ウイルスも変異を繰り返している。ワクチンに用いたターゲットに変異が起きれば、また新たなパンデミックが起きてしまう可能性がある。そうなるとせっかく苦労して開発し、接種したワクチンも、また振り出しに戻されてしまう場合もある。さらに、自分に免疫抗体があり感染しないとしても、感染力のあるウイルス飛沫を飛ばす可能性は依然としてある。

感染対策では、限られたカードの中で、複数の対策をできる限り同時に行い、絶対に感染しない、感染させないようにしていくことが大切である。