この夏、政府の持続化給付金をめぐってさまざまなトラブルが起きた。渦中のコールセンターには、一体どんな問い合わせがあり、どんな対応が行われていたのか。元オペレーターがその内幕を明かす――。(第4回)
オフィスの通路
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絶対に使ってはいけない言葉のはずなのに…

「どうあがいても、入電者様が給付金をもらうのは無理だと思います」

近くの席に着台していた私は、耳に入ってきた彼女の声に耳を疑いました。

どうあがいても?
もらう?

コールセンターのオペレーター、しかもコロナ禍で日々のやりくりにさえ苦しんでいる方々からの問い合わせを受けている人間ならば絶対に使ってはいけない言葉だと、彼女にはわからないのでしょうか……。

「人選」は行われていなかったのに等しい

持続化給付金という事業は、準備期間がほとんどなく垂直立ち上げで始まっただけに、当初は制度内容そのものから末端の現場での運営にいたるまで、さまざまなほころびや矛盾がありました。

コールセンターで実務に当たるオペレーターや管理者の人選も、例外ではありませんでした。

いや、厳密に言えば、人選は行われていなかったのに等しいのです。

この手記の初回でも触れたように、私が持続化給付金コールセンターでの仕事に応募した際、派遣会社での面接も行われず、登録済みの職歴だけで採用が決まりました。

業務が始まった後、他の派遣会社からのスタッフに聞いてみると、採用までの経緯はどこも同じようなものだったそうです。コロナ禍の最中、多くの応募者との直接の対面は避ける方が賢明だし、おそらくコールセンター運営会社からは大量の人員をすぐに確保せよと発注を受けていて、選考に時間をかけている余裕もなかったのでしょう。

ただ、スタート時は不備も多かった持続化給付金の制度内容やコールセンターの運営体制が日を追うにつれ改善されていったのに対し、センターへスタッフを送り込む派遣会社の人選だけは、いつまでたっても「拙速」としか言いようのないものでした。各派遣会社は、センター運営会社からの発注に応じる形で1~2週間ごとに複数のスタッフを就業させるのですが、毎回その中には、〈どうしてコールセンターでの仕事を選んだんだろう?〉と首をひねりたくなるような人がいたものです。