「トランプマニア」と呼ばれる熱狂的支持者

次に投票理由。「候補者を支持するから」という理由でバイデン氏を支持した人は46%。トランプ大統領を支持した人が53%。「トランプマニア」と呼ばれる熱狂的支持者はやはり多い。

一方で「対抗候補を支持したくないから」という理由でバイデン氏を支持した人は68%。トランプ支持は30%。前述のとおり、反トランプでバイデン氏を支持した人が7割近くで、積極的なバイデン支持者はそう多くない。これは非常に重要なポイントだ。トランプ大統領が職を降りても共和党の守護神のような立場で7000万人超の支持者をガッチリ固めて、ことあるごとに「言わんこっちゃない」と批判的な発信を繰り返していくとなれば、積極的な支持者が少ないバイデン氏は非常に苦労すると思う。

以上のような属性別の投票行動にも修復不能なアメリカ社会の分断ぶりがよく表れている。移民国家としてスタートし、連邦制や奴隷制度の是非を巡って対立、南北戦争や世界恐慌を経てアメリカの二大政党制は形作られた。つまり「分断」自体はずっと以前から内包していたわけだが、それを極端に煽り立て、亀裂を深めたのがトランプ大統領なのである。一方、新型コロナ対策で明らかに失政した、と言われるトランプ大統領だが、その影響は投票には驚くほど表れていない。

共和党の支持層は経営者やエスタブリッシュメント(伝統的な支配層)で、民主党は労働者や労働組合というのが一般的なイメージだが、そこは様変わりしていることも見て取れる。最近の動きとして非常にハッキリしてきたのは若い世代の共和党離れ。シリコンバレー系のIT、ハイテク関連のビジネスパーソンには総じて共和党嫌いの民主党支持が多い。

たとえば多くのIT、ハイテク関連企業の本社があるワシントン州(主要都市シアトル)、オレゴン州(主要都市ポートランド)、カリフォルニア州の西部3州は圧倒的なブルーステート(民主党支持の傾向が強い州)だ。

カリフォルニア州北部のシリコンバレーでは不動産価格が高騰しすぎて、サンフランシスコに住んで通うビジネスパーソンやサンフランシスコに本社を移す企業が増えている。それでも足りなくて、さらに南のアリゾナ州にまで人や企業が移り始めた。アリゾナ州は最近まで(大統領候補にまでなった)ジョン・マケイン氏の影響で共和党が強かったが、今回の大統領選では激戦州となりバイデン氏が辛勝した。その理由の1つはアリゾナのシリコンバレー化と言われている。