反トランプか、トランプ支持か

今回の大統領選はバイデン氏の政策やビジョンはほとんど置き去りにされて、「反トランプか、トランプ支持か」を問う側面が大きかった。16年の大統領選で勝利したトランプ大統領が獲得した票数は約6200万票。負けたとはいえ、トランプ大統領も前回を大きく上回る票数を得たことにアメリカ社会の「分断」の深刻さを感じる。アメリカ合衆国を英語で「United States of America」と言うが、「Divided States of America」(アメリカ分断国)と言ったほうがアメリカの現状を正確に表現していると思う。

人種別の投票行動(20年11月10日時点でのCNNの出口調査。以下同)を見ると、白人の41%がバイデン支持で58%がトランプ支持。黒人は87%がバイデン支持で12%がトランプ支持。以下、ラテン系は65:32、アジア系は61:34、その他は55:41でバイデン支持が多い。

これは州ごとの選挙結果とリンクしていて、トランプ大統領が勝利したのは白人が多いアメリカ中西部から中央部、南部の州が集中している。一方、黒人やヒスパニックはどちらかといえば都市部に多く、東部や西部の州でのバイデン氏の勝利を後押しした。

共和党と民主党の支持が拮抗した激戦州は「スウィングステート」と呼ばれる。選挙人29人のフロリダは南部最大のスウィングステートだ。温暖なフロリダは白人の金持ちのリタイア先であり、中南米から逃れてきた人々が最初に駆け込む土地でもある。今回も接戦が予想されたが、トランプ陣営がバイデン氏を「ソーシャリスト(社会主義者)」呼ばわりする戦術が奏功した。ソーシャリストの圧政に苦しめられてきたキューバやベネズエラからの移住者が、こぞってトランプ支持に走ったのである。このようなスウィングステートにおける揺り戻しはあるものの、人種別の投票行動というものは今後もそれほど変わらないだろう。

さらに詳しく、属性別の投票行動を見てみよう。まずは家計状況について。「4年前より良い」と答えた人の実に72%がトランプ支持。一方、「4年前より悪い」という人の77%がバイデン支持。暮らし向きの良し悪しが絵に描いたように支持に直結しているが、「4年前と同じ」という人はバイデン支持が65%でトランプ支持が34%だ。

雇用条件で見ると「フルタイム」で仕事をしている人の51%がトランプ支持。パートや派遣など「フルタイム以外」の人たちは57%がバイデン支持で、雇用条件の良し悪しによっても支持がわかりやすく割れている。この人たちはバイデン氏の組閣で左派と言われるバーニー・サンダース氏やエリザベス・ウォーレン氏が入ってくるかどうかを注視しており、この後の支持率に大きく影響してくる。