仕事やお金を失っても危険な性行為をやめられない人たちがいる。長年、依存症問題に関わってきた精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏は「2000人以上の性依存症の治療に立ち会ったが、性欲が強すぎてセックス依存症になった人はほとんどいなかった」という——。

※本稿は、斉藤章佳『セックス依存症』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

会談に座り込んで絶望する若い男性
写真=iStock.com/OcusFocus
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「セックス依存症」という病名は存在しない

現時点で臨床現場において、「セックス依存症」という診断名は存在しません。病院の診察室で医師が「あなたはセックス依存症ですね」と告げることはあっても、それは正確な診断名ではありません。

類似の診断名として「性嗜好障害」という病名があります。これは、性的満足を得るための手段が偏っていて、一般的な社会通念を逸脱した反復的・強迫的な性行動や衝動を指しています。

必ずしも犯罪に至るわけではなく、性的ファンタジーや強迫的なマスターベーションにとらわれるケースもあります。そして、そのことで生活が破綻する人も多くいます。

性行為に耽溺するケースでいうと、とにかくセックスをしないと落ち着かない、生活に支障をきたしたり不利益を被ったりしてもなお、危険な性行為を繰り返してしまうことを指します。

2017年に佐々木希さんがドラマ『雨が降ると君は優しい』(Hulu)で演じた女性はセックス依存症でしたが、作中での診断名は「性嗜好障害」でした。

そして近年、この分野では、ちょっとした大きな動きがありました。