セカンドライフを考え始める世代にとって、自分の親の財産管理は課題のひとつ。スマートフォンアプリでお金の入出金、家族で明細が共有できる「つかえて安心」の需要が伸びている。

誰もが考えておくべき親の「認知症リスク」

新型コロナウイルスの感染拡大によって、自分の健康だけではなく、親の健康や財産管理、相続について関心が高まっている。しかし、移動が制限されるなかでなかなか親と会えないという人も多いだろう。そのような中でも「認知症のリスクは特に考えておくべきこと」と警鐘を鳴らすのは、三菱UFJ信託銀行の櫨原大輔氏だ。

内閣府の「高齢社会白書」(2017年版)によると、2025年には65歳以上の高齢者のうち、約5人に1人が認知症になる可能性がある。いまや認知症は特別なものではなく、誰もがうまく付き合っていく方法を考えておかなければならない時代だ。

「認知症で判断能力が低下すると、契約行為や預貯金の出し入れができなくなってしまいます。手遅れにならないよう、親が元気なうちに準備しておくとよいでしょう」

櫨原大輔(はぜはら・だいすけ)
三菱UFJ信託銀行株式会社
リテール企画推進部

三菱UFJ信託銀行では、親の認知症を心配する40〜60代からの相談が増えているという。たとえば、父親はすでに他界し1人暮らしをする80代の母親を持つ女性。成年後見制度について調べると、この制度は、認知症になったときなどに備え、家庭裁判所が財産を管理する後見人を選定するものだが、手続きに時間がかかり費用も安くはないことがわかった。そこで、もっと手軽な方法はないかと相談に訪れた。コロナ禍特有の心配事の相談もある。70代の母親の近くに住んでいる夫婦は、キャッシュカードを預かり、入出金を代行していたという。しかし親のカードを借りて使うことを後ろめたく思っていた。さらに、緊急事態宣言以降外出が難しくなってからは、気軽に銀行の店頭に行けないことに不便を感じるようになり、「自宅にいながら入出金ができるサービスはないか」と担当の銀行員に電話で相談した。

 

親の資金の出し入れは家族の情報共有が不可欠

三菱UFJ信託銀行では、財産管理の悩みを解決する商品として、2019年3月に「つかえて安心」を販売開始。当初から大きな反響があったが、コロナ禍により、ますます問い合わせが増えている。

「つかえて安心」は、指定された代理人が契約者に代わってお金を払い出せるサービス。スマートフォンの専用アプリで手続きが完結するのが大きな特長だ。前述の相談者のように、銀行のATMへ行くのが難しいケースでも外出する必要はない。代理人がお金を使った際に領収書やレシートをスマートフォンで撮影して請求すれば、任意の口座にその金額が振り込まれる仕組みで、細かく請求するのが面倒な人には、毎月指定した金額(20万円まで)を、定期的に払い出す設定も可能。

「はじめは、定額払いの利用が多いかなと思っていたのですが、ふたを開けてみれば1割程度です。家計簿アプリのような感覚で使い勝手がいいので、その都度請求する方が多いようです」

さらにうれしいのが、代理人以外の設定したメンバー全員に、請求時に自動的に通知を届けることができる「みまもり機能」。日用品から医療費まで逐一支払いが共有されるので、財産管理を行う代理人の精神的負担も軽減できる。相続の際に、お金の管理者が「黙って使いこんだのではないか」と疑われるケースは少なくないが、「つかえて安心」を利用してお金の入出金や使い道を明確にしておけば、そうしたトラブルも回避できる可能性が高い。

「離れて暮らしていても、家族がお金の使い方を通して親を見守ることができるので “今日は病院に連れて行ってくれたんだ”など、代理人への感謝の気持ちも生まれます」

お金の使い道や回数に制限はなし。単に親の財産管理のためだけではなく、商品名にあるとおり、まさに「使う」ことに焦点を当てて商品設計がされているのだ。

「実際にデータを取ってみると、払い出し1回あたりの金額は、3,000円未満が約5割。一番少額だったのはスーパーの有料レジ袋で5円でした。この商品が普段使いされていることが、うれしかったです」

なお、高額の記録では、有料老人ホームの入居金などで数千万円の払い出しがあったそう。

親が元気なうちは、財産管理に関する備えは後回しになりがち。しかし元気なうちに代理人を選定してお金の使い道をよく話し合っておけば、判断能力が低下しても本人が望むお金の使い方ができる。「つかえて安心」は、200万円から始められるので、使い勝手を確かめてから、資金を追加するのがいいだろう。

ただし、契約するのは親。子どもから親にお金の話を切り出すのは難しい面がある。

「親世代の方の話をお伺いすると、認知症になって子どもに迷惑をかけたくない、と考えていらっしゃる人が多くいます。判断能力が衰えてからでは話すこともできませんから、遠慮せずに相談してみるのがいいと思います」

内閣府の「認知症に関する世論調査」(2019年)によると、自分が認知症になったときの不安として、7割以上の人が「家族に身体的・精神的負担をかけるのではないか」を挙げ、トップになっているという調査結果もある。資産を「守る」「引き継ぐ」だけでなく、親が自分の好きなことにお金を「使ってほしい」という願いを伝えれば、相談を持ち掛けやすい。今年の年末年始に帰省した際に、じっくり話してみてはいかがだろうか。

●お問い合わせ先/三菱UFJ信託銀行株式会社
https://www.tr.mufg.jp/
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