9月16日、自民党の菅義偉総裁が第99代首相に選出され、新内閣が発足した。一方、菅氏をめぐっては、SNS上で「スガやめろ」というハッシュタグを投稿する動きもある。文筆家の御田寺圭氏は「左派やリベラル派が政権に対して侮蔑と嘲笑のまなざしを注いでも、賛同者が増えることはないだろう」と指摘する――。
衆院予算委員会で答弁を終え、席へ戻る菅義偉官房長官(手前左)。右は安倍晋三首相=2020年2月5日、国会内
写真=時事通信フォト
衆院予算委員会で答弁を終え、席へ戻る菅義偉官房長官(手前左)。右は安倍晋三首相=2020年2月5日、国会内

「スガやめろ」のハッシュタグがトレンド入り

安倍晋三前首相の突然の辞任表明から、にわかに盛りあがった「ポスト安倍」の座を巡る政治レース。新総裁に選出された菅義偉内閣官房長官(当時)は、総裁選中から次期首相がほとんど確実視されていた。

しかし、インターネットを眺めてみると、選出前から「菅やめろ」とか「スガ政治を許さない」といったスローガンで一致団結した人びとからのバッシングが強まっていた。これは2020年9月12日、筆者のTwitterのトレンドに表示された「#スガやめろ」のハッシュタグだ。

Twitterのトレンドに表示された「#スガやめろ」のハッシュタグ
画像=御田寺圭

また、9月17日に正式に菅政権が発足してからも「#スガ政権の退陣を求めます」といったタグがトレンド入りし、すでに大量の批判コメントが寄せられている。

「自助>共助>公助」になっているという批判

まだ「菅総理」「菅内閣」は発足して間もないにもかかわらず、この盛りあがりようは目を見張るものがある。とりわけ官房長官時代にテレビインタビューで、国の基本方針として「自助・共助・公助」を掲げたことに対して、違和感の表明や批判が噴出しているようだ。

自民党総裁選に立候補した菅義偉官房長官が、「国の基本」と位置づける「自助、共助、公助」という言葉が議論を呼んでいる。本来の使われ方とはズレているという指摘もある。
(中略)
「『自助・共助・公助』は、本来、『共助』を強調するための表現だったのに、いつの間にか行政が『自助』を強調する言葉にすり替えられている」
災害対応の観点から、そう問題視するのは、阪神大震災をはじめ国内の自然災害被災地の復興に深く携わってきた兵庫県立大大学院・減災復興政策研究科長の室崎益輝(よしてる)教授だ。
「行政がこの言葉を持ち出すときに根底にある通念は、7:2:1の原則。『自助』7割、『共助』2割、『公助』1割で、『公助』の限界を示し、基本的には自己責任を唱えるニュアンスです」
毎日新聞『菅氏強調の「自助・共助・公助」がはらむ問題 本来の意味とズレ?』(2020年9月3日)より引用

「自助、共助、公助」という文字列は、なるほど発言者によって印象が変わりうる。たとえば自民党がこれをいえば「自助」を強調して想起させるが、共産党がいえば「共助あるいは公助」を前面に押し出しているように聞こえる。

「自助、共助、公助」という一見すると等価な並びが、自民党的なネオリベ的文脈によって「自助(自己責任論)」の側面が強調されている、あるいは「①自助 ②共助 ③公助」の順で優先順位がつけられている――というのが、多くの人の批判点となっているようだ。