モーリシャスで座礁 「社員17人」の小さな会社は莫大な賠償金を支払えるのか(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年9月10日号)

インド洋の島国モーリシャスの首都で8月29日、大規模なデモが起きた。

「沖合で貨物船『わかしお』が座礁して重油1000トンが流出し、事故対応をめぐって不安を覚えた住民が『今の政府はいらない』などと抗議したのです」(国際部記者)

モーリシャス政府が損害賠償を求めているのが、貨物船を所有し、岡山県笠岡市に本社がある長鋪(ながしき)汽船だ。

「長鋪さんは江戸時代から150年続く同族企業で、長鋪慶明社長は地元ロータリークラブの会長も務めた。所有するタンカーなど外航船11隻を、今回貨物船を運航していた商船三井などの海運会社に貸し出しています」(地元関係者)

長鋪社長(笠岡ロータリークラブHPより)

社員数は17人で、本社は老舗旅館のような佇まい。長鋪社長は海沿いの500坪の土地に居を構えている。

今回の事故による環境への被害はどのくらいかというと、

「モーリシャスは世界有数の生物多様性を誇り、サンゴ礁やマングローブの経済価値はかなり高い。今回の事故は、推定100万頭の海洋動物が死ぬなど漁業にも多大な影響が出た、1989年のエクソンバルディーズ号のアラスカ沖での原油流出事故に匹敵すると考えられる」(環境経済学専門の栗山浩一・京都大学教授)

この事故でタンカーの所有会社が地元住民らに支払った補償金は3億ドル(約320億円)以上。

また、97年に島根県沖で6000トン強の重油が流出したロシア船籍のタンカー、ナホトカ号事故の補償額は約261億円だった。