ほかにも腸内細菌を整えて腸の過剰運動やガスの発生を抑える「乳酸菌製剤」や、慢性的に腸運動が不調な人に有効な「漢方薬」もある。西洋薬と漢方薬の違いはなんだろうか。漢方薬処方のスペシャリストである渡辺医師に続けて聞いた。
「漢方では下痢も便秘も“腸の機能異常”により起こると考えます。『大建中湯』『小建中湯』などを下痢の治療に使いますが、それらは便秘の治療にも使うのです。また1つの薬に含まれる複数の生薬がそれぞれに作用するので、オーケストラのような働きをしますね。大建中湯なら、山椒が腸の動きの調整をし、乾姜(生姜を蒸したもの)が腸管の血流改善をし、人参が疲労回復をするというように、下痢を止めながらお腹を温めて食欲を増し、冷え症を改善して疲れを取ります」
「下痢を起こさない生活習慣」を意識しよう
脳が受けるストレスを和らげる「抗不安薬」を服用して腸の不調が改善されることもあるが、それは最後の手段。まずは腸の神経に働きかける薬を試し、次にこれから紹介する「下痢を起こさない生活習慣」を意識しよう。3つあり、1つめは「飲酒」を控えめに。アルコールは腸の神経に作用するため、便秘や下痢に傾きやすくなる。大和田医師によると「アルコールによる腸や腸内細菌へのダメージ」もあるとか。
「2つめは睡眠不足に陥らないことです。睡眠時間が少なくなると活動時の“交感神経優位”の時間が長くなります。腸管の働きをゆっくりにして栄養素などを吸収するためには、副交感神経優位な状態でなければなりません。ですから交感神経優位が続く→腸の蠕動運動が活発に→下痢、となるのです」
3つめの習慣として、熟した果物、麦類、海藻類、里芋などに多く含まれる「水溶性食物繊維」を意識して摂取するといい。下痢気味な人にとっては「水分保持と便の形成などに役立つ」(大和田医師)という。水溶性食物繊維は、水分を含むとゲル状になるのだ。
それなら便秘には……と正解が予想できたあなたは素晴らしい。そう、便秘気味な人は、「不溶性食物繊維」を中心に摂取するといい。玄米やライ麦パンなどの穀類、根菜類、きのこ類などに豊富に含まれる不溶性食物繊維は、腸を刺激して蠕動運動を活発にし、便を押し出す作用がある。ただし便秘の原因によっては、取りすぎると悪化することも。また通常の便秘の場合は水溶性食物繊維も適宜取り入れたい。
下痢が続くと、必要な栄養素を吸収し、不要なものを排出する消化器系の機能が低下する。夏バテや免疫力低下、気分の落ち込みにもつながってしまうだろう。反対に腸の不調を改善すると免疫力がアップし、暑さに負けない“脳のやる気”も出てくるはずだ。