髙田明が認めた伝える達人とは

さらに大事なのは、話の合間に入れる「間」の取り方です。能の世界では足を踏み出すタイミングがコンマ一秒違うだけでも一流と二流の差がつくと言われますが、コミュニケーションにもそれと近いものがあります。伝え方がうまい人は、あえてところどころで間をつくります。大事な話をした後に少し黙って内容が相手に浸透するまで待ったり、逆に大事なポイントを伝える前に間を取って期待感を持たせたり。間の使い方を覚えると、同じ内容でも深く伝えられるようになるはずです。

ものを言うのは口だけではありません。僕は目に喋らせるし、指にも喋らせます

また、ものを言うのは口だけではありません。僕は目に喋らせるし、指にも喋らせます。ほら、見てください。「このスマホは何グラムで軽いですよ」と言葉だけでなく、スマホを手に持って上下に数回動かしながら「こんなに軽いんです」とやったほうが、軽さが伝わりますよね?もっと強調したいときにはもう片方の人差し指で指す。本当に軽さが伝わるでしょう?

以上、テクニックをいろいろご紹介しましたが、やはり大切なのは伝える人の想いと姿勢です。先日、長崎のローカル局で京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥先生に時間をつくっていただき、コロナ問題についてオンラインで対談をしました。山中先生は「コロナは人類の危機」「桜は来年戻ってくるけど、人の命は戻ってこない」とおっしゃっていて、その言葉は僕の中にすっと入ってきた。心に響いたのは、表現が巧みだったからだけでなく、言葉の向こうにある山中先生のコロナ問題への切実な危機感が伝わるからだと思います。

伝える人のミッションやパッションは、オンライン会議の画面越しでも伝わります。ですから、画面に映る自分の表情・姿勢は非常に大事です。そのことを忘れないでコミュニケーションを取ってもらいたいですね。

(構成=村上 敬 撮影=竹内さくら)
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