仏教の教えでは、生きとし生けるものすべてが、かけがえのない貴重な存在です。もちろん人間も例外ではありません。人間としてこの世に生を受けるということ自体が、天文学的な確率で、まさに奇跡といってもいいからです。つまり、人間は幸運の結晶であって、誕生した瞬間に今生の目的を達成しているわけです。のちの人生での出来事は、すべてオプションの「おまけ」といってもいいでしょう。もともと生きているだけで儲けものですから、あとはいかに楽しく徳を積むかだけです。

もちろん人生を無為に送ってしまうのは残念ですが、さりとて「~しすぎ」ることも、同じくらいよくありません。健康を害したり、家族や友人との関係を犠牲にしたり、目標を達成できずに失意のどん底に落ち込んだりしては、かえって逆効果になるからです。

悩みゼロの秘訣は「中道」

仏教では「中道」といいますが、何事も「よい塩梅あんばい」に取り組むのがベストでしょう。

ビジネスパーソンにありがちなのですが、「仕事を認めてもらうため、もっと頑張らなくては」「会社でもっと出世しなくては」などと焦って仕事をしすぎ、自分を追い詰めてしまわれるのはよろしくありません。

 

ありがとうの響きが自分を守る結界となる

生きているだけで儲けものと申しましたが、この世には不条理な出来事も待ち受けていて、さまざまな不幸やトラブルに遭遇します。そうしたときには、どうすればよいのでしょうか。

まずは、ありきたりですが、基本に戻り、人間として生を受けた幸運を噛みしめ、世の中への感謝を口にすることをお勧めしたいです。自分の気持ちが落ちているときは社交辞令のようになってしまうかもしれませんが、それでもかまいません。とにかく感謝の言葉を口にし続けることが大切です。自分が発した「ありがとう」の響きは、自らを守る結界となってくれます。

次に、マイナス思考を停止することをご提案します。私たちには、つながる鎖のように思考を追いかけるクセがあります。例えば、心配事があればそのことが頭から離れなくなるし、嫌いな人がいればその人のことばかり考え、不愉快な思いを募らせてしまいます。それは、自分で自分を不幸に追い込むクセです。「負の感情を持ってはいけない」のではなく、「負の感情を持っている自分に気づいてやめる」という作業です。