一行のタイトルに目が留まって

本を出すタイプの人とは思いませんでした、と感想を述べると「おっしゃるとおりです」と笑う。「ある日自分のデスクの上に乗っていた企画書に書かれた、一行のタイトルに目が留まって。このタイトルを提案してくる編集者に、ただ会ってみたくなったんです。直感的に」

中野善壽『ぜんぶ、すてれば』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
中野善壽『ぜんぶ、すてれば』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

ぜんぶ、すてれば――中野の人生の核心をつく言葉だ。

新たな価値の創造、ビジョンメーキング、強烈なリーダーシップ……。中野の経営を形容、評価する言葉は華々しいが、その思考法や「正解」を期待して本書を開くと、あなたは裏切られる。「確固たる哲学や信念なんてなにもない。成果やプライドなんて、ぜんぶ捨てればいい」。それが、中野の答えだからだ。

「僕にとっての価値とは、環境適応と変化対応。いかに環境に適応するか。変化にどれだけ速く対応するか。それだけ」。寺田倉庫の変革も、「羽田空港に近く、都心へのアクセスもいい」という環境に適応し、クリエーティブな「付加価値」が重視されるという時代の変化に素早く対応しただけであり、中野からすればシンプルな帰結だった。

中野の体験談や考え方から得られるのは、こだわりなく、いつでも変われることの重要性だ。

「考えているだけでは変われません。準備して変わろうとして変わるのはただの延長線で、本質的な変化じゃない。考えている暇があったら、すぐ変わればいい。変わらないほうがよっぽど怖いですよ。思いがけない出来事に直面し、そして決断する。そうして、人は成長するんですから」

中野善壽
1944年生まれ。青森県立弘前高校、千葉商科大学卒業後、伊勢丹に入社。鈴屋に転職し海外事業に携わる。その後台湾へ渡り、百貨店経営に携わり、2011年に寺田倉庫のCEOに就任。19年8月東方文化支援財団を設立。
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(撮影=的野弘路)