コロナ禍においてトランプ陣営の戦略は瓦解

7月冒頭、共和党重鎮であり選挙戦略のプロであるカール・ローブ元大統領顧問がFox Newsの番組America's Newsroomのインタビューで、トランプ陣営は8月の共和党大会前に選挙戦略のリセットを行うべきだと主張した。曰く、「2期目の大統領は、自らに対する世論調査やメディアの評価が間違っていると主張するだけではなく、再選後に何をするのかを示すことが必要である」。筆者もこの点についてカール・ローブ氏の主張に強く同意する。

ホワイトハウスとアメリカの大統領アメリカの政治概念を状態します
写真=iStock.com/Bet_Noire
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トランプ陣営の選挙メッセージ戦略は、今年コロナ禍が発生するまでは明確なものであった。トランプ大統領は非常に困難な選挙公約を掲げたものの、その主要公約の達成率は極めて高く、大減税、規制廃止、国際条約脱退、最高裁判事の保守派指名などの実績を上げてきた。

トランプ大統領は、好調な経済情勢とマイノリティの低失業率を演説で常に強調し、政権運営実績をPRすることを中心に据えた現役大統領らしい選挙戦を展開してきた。また、娘婿のジャレド・クシュナー氏に音頭を取らせ、アフリカ系有権者に狙いを定めた刑務所改革などの政策イシューに取り組んだことも特徴的であった。

しかし、トランプ陣営の選挙キャンペーンはコロナ禍において大きく変更せざるを得ない事態に陥った。都市封鎖が実施されたことにより、失業率が上昇したこと(特にマイノリティ)は、「経済実績」を訴える戦略を一瞬で瓦解させてしまった。

また、白人警官によるジョージ・フロイド氏の殺害事件に端を発する抗議・暴動は、トランプ大統領の有色人種内でのイメージを引き下げた。そのため、トランプ陣営は、選挙メッセージの立て直しが急務となっており、その有効性の見極めを行うために複数のメッセージを新たに作りふるいにかけている。では、トランプ陣営が展開している代表的なメッセージ戦略をみてみよう。