医師になるような優秀な子どもは、優秀な両親からしか生まれない。そう考えてはいないだろうか。実は、親のIQ(知能指数)と子どものIQは関係ない。小児科医の松永正訓氏は「『トンビが鷹を生む』と『うりの蔓に茄子はならぬ』はどちらも真実。だから子どもの才能を最初から決めつけないほうがいい」という——。

※本稿は、松永正訓『オンリーワンの花を咲かせる子育て』(文藝春秋)の一部を再編集したものです。

「知能指数(IQ)は遺伝子で決まる」は本当か

「ボク、大きくなったらお医者さんになりたい!」

こんなふうに言う幼稚園児がけっこういます。私はうれしくなって、「おお、いいね。お医者さんはやりがいのある仕事だよ」と答えるのですが、お母さんは苦笑して「うちの子なんだから、なれるわけがないでしょ」と言ったりします。

松永正訓『オンリーワンの花を咲かせる子育て』(文藝春秋)
松永正訓の最新刊『オンリーワンの花を咲かせる子育て』(文藝春秋)

いえいえ、そんなことはありませんよ。そんなふうに決めつける必要はありません。ベストセラーになった本のなかには「知能指数は遺伝子で決まる」みたいに書いているものもあります。それって本当でしょうか?

それを解明するには、100%同じ遺伝子を持った一卵性双生児と、遺伝子の一致率が50%の二卵性双生児の比較研究を見てみると、遺伝子と環境要因が個人に及ぼす影響が分かります。安藤寿康さんの『遺伝子の不都合な真実』(ちくま新書)を紐解くと、知能指数(IQ)についての報告が出てきます。

まずその前に、指紋について見てみます。一卵性双生児では、指紋の一致率は0.98です。ほぼ完全に一致しています。二卵性双生児では、0.49です。ちょうど半分ですね。これは遺伝子の一致率が100%と50%という比率にピタリと合いますから、指紋は遺伝子によって決まっているわけです。