ずれやすい「体内時計」は光を使って自分で調整

昼だけでなく夜のリズムも大切だ。昔から「寝る子は育つ」といわれるが、大人になったら、“規則的に同じ時間”によく眠ることが鍵になる。

「傷の修復を促す『成長ホルモン』の血中濃度は、通常は寝ている時間の午前2~4時にピークを迎えます。そのときに深い眠りであれば、より多く分泌されます。深夜に起きている人は、起きている時間分、成長ホルモンの分泌がずれます。どういった生活パターンでも、同じ時間に睡眠をとっていることが重要。不規則なシフトワーカーの人は、週の半分以上の生活を送るほうをベースに考えて」(中村准教授)

健康を維持する最大のポイントは、体内時計を規則的に刻ませることだ。

中村准教授は「特に現代では常時光を浴びやすく、体内時計が狂いやすい」と警鐘を鳴らす。生物が持つ体内時計は、光に最も大きく影響を受ける。

「脳の視交叉上核という場所に存在するのが体内時計の司令塔(中枢時計)。中枢時計は正確に24時間を刻んでいるのではなく、人では平均して24時間よりも少し長い周期になる。つまり毎日、時計の針を24時間に合わせる調節が必要で、それは光(主に太陽光)によって行われる。中枢時計は光を感じると、さまざまな臓器に存在する時計遺伝子(末梢時計)へ、神経やホルモンを介して“時刻情報”を伝えています。そして末梢時計はそれぞれの器官の生理機能のリズムをつくっているのです」

そのため、夜間にコンビニの明かりを浴びたり、スマートフォンやパソコンから発せられる青い光(ブルーライト)を見続けたりすると、中枢時計の針が狂ってしまう。反対に夜を中心とした生活なら、昼に太陽の光を避けるなどしないと、規則的なリズムがつくれない。

また、時々夜勤が交じる生活なら、夜勤の翌日もなるべく日中に起きていること。睡眠時間が短くてつらいが、その日の夜に早寝をすることで睡眠を補うといい。すると夜中の成長ホルモン分泌時間に一層深い眠りとなり、体が回復しやすくなるという。

〈規則的なリズムは健康の兆候であり、不規則な身体機能や不規則な習慣は不健康状態をつのらせる〉とは、西洋医学の父と称されるヒポクラテスの言葉。

時計遺伝子は体内の臓器やホルモンがうまく機能するように、常に複雑な調整を続けている。そのリズムに沿って、心身に快適な環境を生み出そう。

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