あきらめて、別の選択肢を選んだ経験

僕自身の経験からして、会社に勤めた人が、社会的に一人前の職業人だと認めてもらえるのは、27~28歳くらいだと思います。

大学を出て、会社に就職したときを、社会人としての出発点ととらえる人もいるでしょうが、その時点ではまだ何者でもないのです。僕は、27~28歳ころになって、ようやく出発点に立ったという実感がありました。

まだお金を持たないそんな時期に大切なのは、自分が本当にやりたいことは何なのか、自分はどういう人間でありたいのかといったことを、じっくり考えてみることです。今の仕事にかかわることでも、仕事とまったく関係のないことでもかまいません。

大リーガーの大谷翔平選手やイチローさんは、幼いころからプロ野球の選手になると決め、それを実現しましたね。あまたいる野球少年の中にいて、プロになり、トップに立とうという選択は、思えばおそろしい賭けです。けれども、彼らが大成したのは「なれなかったらどうしよう」ではなくて「こうなりたい」が、無意識的に体に刷り込まれてきていたからではないでしょうか。

ただ、並の人間では、なかなかそうはなれません。誰しも「こうしたい」「こうありたい」と思いながらうまくいかず、あきらめたり、別の選択肢を選んできた経験があると思います。つまり、大なり小なり、その都度その都度が新たな出発点だったのです。

もし、今の実入りの少ない生活に満足できないとしたら、まぎれもなくそこは出発点です。自分の「こうしたい」「こうありたい」を、もう1度探してみましょう。これまでふるい落としてきた志も、無碍に捨て去ることはありません。むしろ、その中に本当に自分に合った好きなもの、やりたいことがあるかもしれません。

ライバルがいる人は、幸福だ

そうして自身を見つめるとき、自分のまわりにいる人たちを見渡してみることも大切だと思います。特に、ライバルといえる人を、そこに見出せるかどうかです。

ライバルがいる人は幸福です。なぜならライバルは、お手本でもあるからです。「あいつにはかなわない」という点があれば、自分に足りないものが見えてくる。あるいは、自分の長所を生かして、相手の上を行く方策が見つかるかもしれません。武者修行で、他流試合に挑む剣豪にでもなったつもりで、いろいろと想像してみるのもいいと思います。

今を出発点に、何らかの新たな行動を起こす。どんなに小さなものでもいい。そのときに抱く夢や志が、はじめの一歩になります。

日本は、経済面で長期低迷が続いていますから、今は40代でも年収が300万円台という方も、少なくないかもしれませんね。少し、生活の価値とは何かを考えてみませんか。