政治に高い理想を追い求めながらリアルを描こうとした点で、このドラマは傑出している。クリントン政権に広報部長として参画したジョージ・ステファノプロス氏(現在はABCテレビの大物司会者)が本ドラマの制作に関わったため、ホワイトハウス内の人間関係などにも生々しさが漂う。
バートレット大統領の演説は、レーガンとクリントンを足して二で割ったような、理想を体現する豊かさに満ちている。米国の粋を集めたザ・ベスト・アンド・ザ・ブライテストの才能が、大統領の発信する政策理念とそのメッセージ作りに関わっていく。政権は革新的な理想を貫こうとするが、そこには現実が立ちはだかる。議員の地元への利益誘導、交渉に次ぐ交渉で骨抜きにされていく政策、やっと合意できたマイルドな改革にも抵抗する左派、大統領一派を憎む保守派。友人やカップルさえも、二大政党の党派性によって引き裂かれ、関係が破綻する。
実務に携わる人の理想主義が、血を吐くような苦しみと共にあることを示す最良の教科書だと思う。
「政治をやめられない人たち」を余さず描く
少し前に作られたケビン・スペイシー主演の「ハウス・オブ・カード」は、これとは真逆の堕落しきった大統領を描いたが、政治家や権力を批判しようとするあまり、リアルさに欠けるところがあった。トランプ政権の誕生により、無茶苦茶なストーリー展開が全然面白く感じられなくなったという後日譚もついてくるのだが……。
「ザ・ホワイトハウス」も、シーズンが後半になるにつれ、物語が暗いトーンを帯びるようになる。バートレットというダークホースを当選させた結束の固いチームメイトがしだいに散り散りになり、互いに不信を抱き始める。それでも、ドラマは4年に1度、合法的革命をめざす候補者たちや、キングメーカーになろうとする「政治をやめられない人たち」の特徴を余さず描いている。その様は、熟しすぎて腐っていくような魅力を帯びている。私自身、政界話に少々疲れたいま、果てしない徒労感も含めてドラマを愛せるような気がする。コロナ不安に揺れる長い幾夜ものお供にぜひ。