「あの時の私はなんだったの!」と責められても仕方がないと思った

 僕と、僕の旦那である亮介君が、ゲイの夫夫として新聞に取り上げられた記事を見て、人づてに連絡先を調べ、さくらからメールで連絡をしてきたのだ。

 僕は正直、戸惑った。だって、さくらからしたら、昔、一瞬でも付き合った男が「ゲイ」だと恥ずかしげもなく公表し、新聞に載り、パートナーまでいる。

「あの時の私はなんだったの!」「私の過去の汚点だわ!」と責められても仕方がないと思ったのだ。

 中学当時は、自分をゲイだとは気づいていなかった事を説明して、司とダブルデートをする為に利用しようとした事を、素直に謝らなくてはいけないと思った。

 勇気を出して、メールに記載のあった番号に電話をかけると、さくらはすぐに出た。

謝りたくてかけた電話で告げられた意外な事実

 さくらは電話先でソワソワしている様子だった。

「あのさ……、七崎の記事、新聞でみたよ」

 先に切り出したのはさくらだった。

「うん、実はそうなんだよね……なんか申し訳ないと思ってて」

「あのさ……、実は、七崎に謝らなきゃいけない事があるんだ。性同一性障害って知ってる?」

「うん、わかる」

「実は俺、それでさ。今はケンジって名前で生活してるんだ」

「ああ、そうだったんだ」

「実は、七崎と付き合う前に、女と付き合ってたんだ。だけどその事が噂になって、その噂が広がっていくのが怖くて……。男と付き合えばカムフラージュになって、変な噂もなくなると思って俺……七崎のこと利用したんだ」

「ちょっと待って! まじで?」

「本当ごめん! ずっと謝りたくて……」

 さくらからのカミングアウトと謝罪をうけて、僕は笑ってしまいそうになった。僕だって、さくらを利用していて、それを申し訳なく思っていたのだから。

「それが……お互い様なんだよ。僕、あの頃、3組の司がずっと好きでさ。司は秀美と付き合ってたから、僕もさくらと付き合って、ダブルデートとして、司と一緒に居たいなって思って、さくらを利用してたの。こちらこそごめん」

「まじかよ!」

 さくらは驚いていたが、笑っていたことに僕は少し安心した。