「2年契約で月額2980円」は、なぜ月額表示?

最近よく聞く「サブスクリプションサービス」(サブスク)。これは「定額制サービス」のことで、月額○○円で映画やドラマ、音楽が好きなだけ視聴できるといったサービスが代表的です。定額制なので利用すればするほどお得になります。逆にあまりサービスを使わない場合は、割高になる可能性があります。かといって、ビュッフェで食べすぎて後で苦しくなるように、無理に利用して時間や労力を無駄にしてしまっては本末転倒です。

携帯電話の料金もサブスクに似ています。契約は2年単位の形態が多く、料金プランは「月額2980円」のように提示されます。これは月極めということもありますが、本来は2年契約ですから合計7万1520円になるところを、小さな単位に分割することで「お値打ち感」を出す効果を狙っています。「デノミネーション効果」と呼ばれる手法です。

エステやフィットネスの年間契約も月あたりの金額で提示されたり、サプリメントも1日当たりの金額で示されると購買のハードルが下がります。これらもデノミネーション効果です。したがって購入する際には分割前のトータル価格を考慮することが大切です。

「デザート付きのお得なセットメニュー」を考えもせず注文は損

ファストフード店でハンバーガーを買うとき、バリューセットなどのセット品を注文しがちではないですか。最初からそのセットが食べたかったのであれば構いませんが、割安だからとか、急いで注文しなければといった理由で選ぶ人も多いと思います。

消費者が支払ってもいいと考える価格のことをその製品の「留保価格」と呼びます。たとえば、AくんとBさんのハンバーガーとデザートの留保価格で考えてみましょう(表3)。ハンバーガーに対してはAくんのほうがBさんよりも価値を感じており、デザートについてはBさんのほうがAくんよりも価値を感じています。

セット品のような「バンドリング」(抱き合わせ販売)は、複数の補完製品(相互に補完し合い価値を高める製品)に対する留保価格が顧客によって異なる場合に、単品価格に加えて、それらを組み合わせたセット価格も提供することによって需要を増やす方法です。表4のように、ハンバーガーとデザートの単品のほかに、セットメニューを加えることで、どの単品だけの価格付けよりも売り上げ(2400円)が増加することがわかります。

単品価格より安いという理由で注文しやすくなる