リーマンショック後、4兆元にもおよぶ財政出動を行い、世界経済を救ったことが中国に自信と自負をもたらしました。今回も“共産主義国らしい”といわれる、強硬なロックダウン(都市封鎖)を実行し、数字上は感染者数の拡大の封じ込めに成功したように映っています。さらに生産現場の早期の立ち上げやPMI(製造業購買担当者景気指数)は2020年2月の35.7から大きく持ち直し、20年3月は52.0と景況拡大と悪化の分かれ目である50も上回りました。

馬渕磨理子氏
馬渕磨理子氏

輸出先の市場の購買意欲が戻ってこないと中国経済の回復も難しいとの意見もありますが、中国国内の所得水準を持続的に高め、貿易主導型の経済から国内の消費主導型の経済に舵をきっていくでしょう。延期されている全国人民代表大会では、大規模な経済対策を打ち出すことが予想され、中国にさらなる自信を与えそうです。

また、コロナショックでサプライチェーンの中国依存が露わにもなりました。今後各国は、サプライチェーンを中国以外にも分散し、国内へ生産拠点を回帰させる動きは強まるでしょう。

金融市場においては、世界を支えているのはアメリカであることをあらためて実感することになりました。政府と米連邦準備制度理事会(FRB)が一体となった経済危機への対応策により株価が戻りつつあります。トランプ政権による2兆ドル規模の財政政策に加えて、FRBは踏み込んだ金融政策として、購入する社債対象をいわゆるジャンク債(投資不適格債)まで基準を緩めることに決めました。この財政政策、FRBの金融政策により金融危機は回避できたとの見方が強いです。

新型コロナ対策を誤れば、大統領選挙で不利になる

ただ、危機が去ったと考えるのはまだ早く、今後も、金融危機回避に向けた中央銀行の取り組みは続くはずです。

また、今回の対コロナの「戦時下」における「小さな政府」の限界を露呈しています。トランプ政権が支持基盤としている保守派は自己責任や自助努力を重んじる「小さな政府」を志向しており、失業者が増え、政府の支出が拡大することは信条に反するのです。ニューヨーク州のクオモ知事が、連邦政府は新型コロナ対応を地方政府に任せきりにしていると指摘していますが、そもそも、共和党は「小さな政府」を掲げており、そういった政権です。対外的にも孤立主義の共和党は、各国への影響力を弱めています。

再度、アメリカが世界を牽引するに、共和党にも、新しい「新保守主義」の様相を強め「大きな政府」の必要性が出てくるでしょう。新型コロナ対策を誤れば、20年11月の大統領選挙で不利になるリスクがあります。