オデキができれば全部やり直しです。まず被せ物や、根の中の詰め物をすべて取り除き、歯の内部の汚れをきれいにする必要があります。ここで難しいのが、前の治療で歯の内部の形が修正されていること。神経を取る作業は、もともと難しいんですが、根の形は人によって異なるため、内部が修正されていると余計にわかりづらくなるんです。だから再治療の難度は、最初の治療よりも高くなってしまう。

歯が痛い
PIXTA=写真

昔の治療痕を開けてみると「これはないだろう」というひどい治療もあります。昔は歯科医の数も少なく、1人にかける治療時間が少なかったのでしょう。ただ私たちの世代ぐらいから「もっとしっかり根の治療をしよう」という機運が高まったと思います。ここ十数年の歯の根の再治療には、歯科医たちの苦労の痕が見えます。

汚れを取る場合、まず汚れを見つけるのが難しいんです。汚れは中に詰まっているのでなく、壁に張り付いた“錆”をヤスリがけするイメージ。“錆”が少しでも残っていれば再発するので、慎重に作業しなければなりません。

実際、1度も治療していない歯の神経を抜く治療のほうが、時間も短く成功率も高いのです。再治療は運がよければ最短で2回。平均すれば3回から5回程度。手強ければ数カ月かかることも。根の再治療は時間がかかると考えていただいたほうがいいです。

治療回数を大きく変える神経の治療

歯周病と虫歯が同時進行した歯はさらに時間がかかります。どちらから治療を始めるかというと、歯周病は1本だけということはないし、治療時間もかかるので、まず歯周病から治療するのがセオリー。崩れかけた家を修復することを想像してみてください。土台がぐらぐらだと安定しませんよね。まず土台をしっかりさせてから建物を修復していくイメージです。もし初期の歯周病であれば、歯石を取り除くだけでいいので、比較的簡単に治すことができます。虫歯も同様で、初期であれば小さく詰めるだけで完了です。

ところが次のような場合は、急に治療回数が増えてしまいます。1つは歯茎を指で押すと歯の周囲から白い膿が出てくるようなケース。これは歯石が歯の周囲のポケットと呼ばれる溝の奥に入り込んでいる状態です。特に奥歯の枝分かれの分岐部分につく歯石は、取り除くのに時間がかかります。もう1つは、ズキズキ痛むなどの自覚症状がある場合です。虫歯が歯の神経に達している可能性があります。虫歯の治療は、歯の神経を治療するかどうかで、治療回数が大きく変わるのです。