不況を生み出す安倍政権と小池都政

資産リッチな国では金利が高いほうが資金に余裕が生まれる。1900兆円の個人金融資産がある日本では、金利が1%上がれば19兆円の余裕が生まれ個人消費につながる。安倍政権と黒田日銀のアベクロバズーカは、ここに着目せず、20世紀の経済に則ったリフレ派の誤った政策を実行、金利を下げて国債を乱発した。結果、今日に至るも成果ゼロである。

資産課税を一律1%とするだけで、所得税をゼロにしてもおつりがくる。個人と企業の固定資産と金融資産に1%課税すれば50兆円。これに10%の消費税を加えれば合計100兆円。つまり法人税や所得税、相続税、その他すべての税金を廃止しても、国債を発行せずに今と同レベルの予算が組める。成熟国ではフロー(所得)に課税しても、税収は伸びない。ストック(資産)課税に切り替えるべきなのだ。このことは本連載でも繰り返し提言してきた。

新型コロナウイルスという未曾有のチャレンジに、安倍晋三首相は腰だめで鉄砲の弾を撃ちまくった。学校の一斉休校、大規模集会の中止・延期、会議・会食などの自粛、そしてとどめの緊急事態宣言。それに輪をかけて小池都知事がキャスター出身らしくテレビカメラを独占して、雇用主をさらに追い込んでいった。いずれも不景気を生み出す施策であり、失業、廃業、所得不足がどこまで広がるか想像もつかない。新型コロナ対策で超大型の補正予算を組むから財政はますます肥大化する。

一方のトランプ大統領は、米中貿易戦争で中国叩きにやっきになっていたが、中国から部品や商品が入ってこなくなったことで、霜降り肉のような相互依存関係というものを身にしみて感じているだろう。

ボーダレス経済の第3原則は「世界レベルの生産および販売の最適化」である。最も低コストで質のいい労働力、潤沢な労働力がある世界の最適地で生産されて、最も高く買ってくれる最適地で消費される。ボーダレス経済では、各企業が収益を最大限に高めるために世界最適化を目指すから、生産と消費の相互依存関係が深まって霜降り化するのだ。

知識も経験もなく、勘だけを頼りに大胆な政策を乱発するトランプ流では、暴れる市場を沈静化することはできない。冷静な判断と施策が要求されるコロナ禍とトランプ大統領は史上最悪の組み合わせである。

日米の無能な為政者に今さら「21世紀の経済を勉強しろ」と言うのは無理難題かもしれない。しかし、冷静な市民は新しい時代には新しい知識と道具が必要だと感じている。新型コロナウイルスによる危機感が人々の目を覚まさせる部分もあるだろう。それが安倍総裁の4選とトランプ再選を阻む結果になれば、せめてもの救いである。

(構成=小川 剛)
【関連記事】
新型コロナを機に観光戦略を再考せよ
「マスクの高値転売禁止」で転売ヤーが次に狙っている商品
未曾有の"コロナ大不況"突入で「あなたはリストラされる」
3兆円投入のツケ「東京五輪の失敗」で大不況がやってくる
「日本は本当の地獄を見る」…コロナ&消費増税のW危機で令和大恐慌へ!